転がる石の上機嫌 #7
◎ おとなの夏休み自由研究
〜映画『かもめ食堂』再考察〜 ◎
梅雨が明け、うだるような暑さと湿気におそわれています。
元気にお過ごしでしょうか。
いやむしろ「無事に生きてますか?」と聞いた方がしっくりくるかもしれません。
今年もお互いこのしんどさを乗り越えて、強く生きてゆきましょうね。約束。
さて、世間は夏休みシーズンに突入しました。
夏休みといえば宿題。
宿題といえば自由研究。
やや短絡的ではありますが、今回は "おとなの自由研究" と題して、私が過去に数回観た映画『かもめ食堂』について再考しようと思います。
映画にまつわる "かもめ食堂クイズ" なるものも用意しましたので (何だそれ) ご興味ありましたらぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
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未見の方のためにざっと説明すると、
フィンランドで小さな食堂を営み始めた若い日本女性サチエ(小林聡美)と、
サチエの元に集まり彼女の店に出入りする人々の交流を描いた、どこか不思議で
ほんわり優しいユーモアに溢れた映画…というのが主な内容。
フィンランドの美しい町並みや自然、そして居心地よく洗練されたカフェや建物のインテリア等が、とても品良くお洒落に映ります。
公開は2006年ということで、遡ると18年前の映画ということになりますが、18年前の映画というのは果たして一般的には古いのか、そうでもないのか。
響きにすると相当昔のような感じがしますが、個人的にはほんの数年前といった感覚で(これは自分の年齢が関係しているのかもしれませんが) いま見直しても全く古びてないですし、むしろ新鮮な印象を受けます。
ところでこのブログは、主に「本や映画や日々のこと」を名目にしているはずなのですが、そういえば最近は日々の雑感ばかりでこのnoteに引っ越してからは一度も映画に触れてなかったなと思い至り、何かないか探していたところ丁度よく我が家のレコーダーに『かもめ食堂』が録画されていたのを見つけ、そそくさとこの自由研究に取り組むことにした次第です。
え?
手間もお金も掛けてないじゃないか?
単なるケチかものぐさ、ですって?
何てことを!(動揺)
いえいえ。
決してそうではありませんよ。
た、ま、た、ま。
偶然に、書きたいと思っていたタイミングで、
運命的に好きな映画が、家のレコーダーに残っていた。
それだけのことなのです。
ネタが無くて手を抜いてるとか、そういうことでは…。
嘘じゃない、本当です。
本当ですってば(汗)。
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さて、本題に戻ります(コホン)。
この映画を好きなポイントは、たぶん観たことがある多くの方々と同じように
"肩の力が抜けたお洒落さ" や
"温かみのある独特のユーモアセンス"
なのですが、忘れていたけど再見してあらためて気づいたことや心に残ったことを簡単にまとめてみたので宜しければご覧ください!
(いま、メガネの縁を軽く上げて、目の奥を光らせている私を想像してください)
ネタバレは極力しないよう心がけます。
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推しポイント① ガッチャマン
フィンランドのヘルシンキを舞台にしているのになぜか往年の日本アニメ「ガッチャマン」が出てきて、それをきっかけに物語が少しずつ動き出すところに面白さを感じるし引き込まれます。
最初の個人的な掴みポイントはここだったかも。
そんなことを思いながら観ました。
推しポイント② ムーミン雑学
フィンランドといえば作家トーベ・ヤンソンによる童話「ムーミン」。
そして登場人物の1人・ミドリ(片桐はいり)がたまに思いついたように突然披露するのがムーミンについての豆知識です。
これといって本編には関係しないのですが、ムーミンファンにとっては多分ちょっとしたマニア心をくすぐられる場面だろうし、ミドリのそのシーンが映画のどこに登場するか、どんな内容なのか、果たしてその雑学を自分は知っていたか、などを確認検証してみるのも楽しいかもしれません。
ムーミンに興味のない方でもちょっとしたトリビアとして箸休め的なシーンになるかと思います。
こういう本筋とはあまり関係無い遊びのシーンがあるのって結構好きです。
今まで特に気にせず流して観ていましたが、あらためて「へぇ…」と思いながらノートにメモをしたのはここだけの話。
推しポイント③ 合気道とヨガ
就寝前のルーティーンとして、毎晩欠かさず合気道の稽古をしているサチエ。
力強く流れるような所作がとても美しかったです。
" 自然の流れと自分の気を同調させる" という合気道の目的や呼吸のポイントがヨガとよく似ている気がして、ヨガ愛好者として親近感を覚えました。
これは余談ですが、サチエの前でヨガポーズを披露するミドリのシーンも短いですが必見。
何とも言えない面白さがあります。
推しポイント④ 謎の女マサコ
多くは語りませんが、女優・もたいまさこさんがここでも良い味を出してます。
ただそこにいるだけで醸し出てしまう面白さ。
何なのでしょう、最高です。
そして掘っても掘ってもマサコの謎は深まるばかり。
彼女の謎めいた不思議さを、ぜひ映画で味わっていただきたいです。
推しポイント⑤ 料理と食事のシーン
おにぎり、豚の生姜焼き、焼き鮭…etc.
食堂がメインの映画なので食べ物のシーンは当然多いですが、どれも本当に美味しそうです。
個人的に印象深かったのが鮭。
厚みがあり、たっぷりと脂が乗って、最近日本のスーパーに並ぶ痩せたものとは明らかに違う御姿…。
そして熱したフライパンに乗せた時のジュワッと威勢がよく美味しそうな音といったら…。
画面越しにも神々しいオーラを放っていました。あぁ美味な鮭が食べたい…。
お客で賑わう店内での食事シーンもまた良いです。
笑顔で、弾むような会話をしながら、楽しく味わう。
たくさんの明るさと幸せに満ちたその光景は、本来の食事はこうありたいと思わされるような、胸に沁みるものがありました。
そして、私はまだ一度も実現できてないですが、この映画を観る時はぜひシナモンロールとコーヒーを用意して観ていただきたいです。
理由は観れば分かります。
より幸せな気持ちでゆったりと、映画の世界に没入できると思うのでおすすめです。
ちなみにシナモンロールはフィンランドの隣国スウェーデンが発祥で、生まれたのは第一次大戦後のこととか。
形は国によって微妙に違うそうですよ。
参考までに↓
推しポイント⑥ 生きることは食べること、食べることは誰かとの繋がり
話が少し脱線してしまいました。
いい加減長いので、そろそろ最後にしたいと思います(本当はもっとたくさん推しポイントはあるのですが!…涙)
映画を観た後にそのテーマを考えることって今までほぼ無かった気がするのですが、このふんわりと優しく、ともするとサラッと流して見終えてしまいそうな映画には、実はとても根本的で大事なことが描かれている気がします。
サチエがある人物に
「コーヒーは自分で淹れるより、人に淹れてもらう方が美味いんだ」
と言われるシーンがあるのですが、
その後にもう一度シチュエーションを変えて、それに似たセリフが語られる場面が出てきます。
私はこれがこの映画の肝だと思っていて、美味しいものは人を元気にするし、生きることは間接的に誰かと繋がっていることなのだ、とあらためて感じたのでした。
よく考えれば当たり前のことなんですけどね。
でも当たり前のことって、人はつい忘れがちになってしまうから。
忘れないでいたいものだな、と久々にふっと基本的で大事なことに引き戻されたのでした。
関係ないようでいて、人も世界もどこかで繋がっている。
だから今日を生きている。
それを意識することで、何かがちょっとでも良い方向に動くと良い。
そんなふうに思いました。
やっぱり好きだわ、かもめ食堂。
あらためて再考察してみても、やはり前回と同様に温かな気持ちで映画を見終えたのでありました。
しかし気になるポイントはまだ幾つかありまして、機会があれば時間を空けてまたいつか再検証してみたいです。
勝手にやってよ…という声がどこからともなく聞こえるような気もしますが。
以上、おとなの夏の自由研究でした。
いかがでしたか?
ここまでお付き合いいただけた方が果たしているのか若干の不安ではありますが…。
個人的にはレポート提出をする学生気分が味わえて、とても楽しかったです(^ ^)
お付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは最後に、冒頭で告知した
"かもめ食堂クイズ "の出題を。
過去に作品を観ていて覚えている方はそのまま読んで回答しても良し。
未見の方や忘れてしまった方は映画を観て答え探しをしても良し。
どうぞ楽しんで挑戦してみてくださいね。
Q1.サチエがプールで泳いでいた時の泳法は?
a.クロール
b.背泳ぎ
c.平泳ぎ
d.バタフライ
Q2.ミドリが映画の中でボーダーシャツを着て登場するのは全部で何回?
Q3.マサコが見知らぬフィンランド男性から突然受け取ったものは?
Q4.トンミ・ヒルトネン青年は、自分の名前を日本語でどのように当て書きされた?
(※漢字5文字でお答えください)
回答できましたか?
全問正解した方には、何か素敵なことが起こるよう私がどこからか「念」を送っておきますね。
それでは、また。
体調崩さぬよう、お身体くれぐれもご自愛してお過ごしください。
良い夏を。
【映画データ】
公開:2006年3月11日
監督:荻上直子
原作:群よう子『かもめ食堂』幻冬舎刊
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ 他
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