同級生の平出和也へ。「お疲れ」。
出会ったのは、高校1年生の4月。陸上部の練習を見学していたお前の姿を覚えている。
あれから約30年経ったけど、こんな形でお前と別れるなんて、心が張り裂けそうで辛い。
最近、夜ベッドに入ると、高校時代の思い出が次々と浮かんでくる。古いフィルムが勝手に再生され、気づくと涙が溢れている。
毎朝、始発電車に乗り、「おはよう」と声を掛け、お前の隣に座る。茅野駅から学校までは一緒に自転車で移動した。お前のスピードに追いつくのがいつも大変だった。
朝練があって、授業を受けて、昼は一緒に弁当を広げる。そして、放課後には辛い練習が待っていた。練習後も一緒に帰宅。茅野駅の3番線で電車を待ちながらいろんな話をして、帰りの電車では愚痴をこぼし合った。「お疲れ」と言って別れ、数時間後にはまた「おはよう」。そんな日々が約3年間も続いた。
住んでいる町も同じ、クラスも同じ、部活も同じ。同級生の中で、お前と過ごした時間が一番長かった気がする。
高校を卒業してからは別々の道を歩むことになったけど、帰省中に鹿の湯のサウナでお前が隣に座っていたことがあったよな。あの時は、お互いにビックリしたよな。焼き肉を食べに行った帰りに車を擦ってしまい、二人で俺の両親に謝りに行ったことも、今でも鮮明に覚えている。
お前のことを考えると、自然と涙が溢れてくる。でも、その涙には悲しみだけじゃなくて、たくさんの楽しい思い出や感謝の気持ちも含まれているんだ。
お前が登山家として有名になり、活躍する姿を見て、同級生や先輩後輩はみんな、お前のことを誇りに思っている。辛い時に、お前の姿に励まされた人もきっと多いはずだ。
ご家族やお子様のことを考えると、無念だよな。どれだけの悲しみと辛さがあったか、想像するだけで胸が痛む。だけど、お前には天国からみんなを優しく見守ってほしい。
俺はこれまで人様に誇れるような生き方をしてきたわけじゃないけど、お前のように、自分の道を極め、毎日を精一杯生きていこうと思う。お前が見せてくれた「挑戦し続ける姿勢」を、俺の胸にしっかり刻んでおく。
そちらへ行くのはまだ少し先になるかもしれないけど、また会えたら、あの頃のようにたくさん話を聞かせてほしい。
だから、お前には、さよならは言わない。
いつかの電車のように、「お疲れ」。
ピオレドール賞、おめでとう。
本当に、おめでとう。
溝部 潤也