『フィスト・ダンス』 第139回 「マーボ先輩」
<100円札は万能だ!?>
「もう、大変なんですよお」
丈次の顔が険しくなると、洋一、力、貴たちも似たような表情になった。
『マタドール』の奥の院には、翔太、清正、和生の3年生と、丈次たち2年生の7人が陣取っていた。
「マーボか。ま、いつものことだろうけど、そんなにひどいか?」
「はい。最近は、ますます。なあっ」
丈次が洋一たちに同意を促すと、みな、一斉に、はい、と首を縦に振る。
「ハハハハ、マーボは、ちっとも悪いなんて思ってねえよ。遊びってか、おまえたちが可愛いからだろ」
「んだ。俺もそう思う。おまえらが、ええって顔するのが面白いんだろ。それに時には、どかんとくれるだろ、マーボのことだから」
清正と和生が、マーボをかばうかのように言うと、丈次は、心外!という顔つきで「清ちゃん、和ちゃん、それは違うと思う」と反論した。
清正と和生は、小学校からの丈次の先輩なので仲がいい。
「違うってか。どう違うんだよ?」
「うーん、単に欲しいから買って来いかなあ。でも、あんなにたくさんは要らないと思うけど」
今度は貴だ。貴も小学校は清正、和生と同じで、目をかけられている。
今日のテーマは、マーボだ。マーボが100円札1枚を渡して、「コーラのホームサイズ5本とポテトチップス3袋を買って来い」とやることについてのクレームだった。
「そんで100円札1枚かよ」
「清ちゃん、時には、あ?ねえやって50円玉1枚の時もあるんだよ。全く、何を考えてんだか、マーボ先輩」
「ハハハハ、何も考えちゃいねえよ。おまえたちを遊んでやってるくらいのもんだろ」
清正が丈次に言った通りである。マーボのことだから深い考えなどない。
「たまに多くくれる時もあるんだろ?」
「はい。本当にたまにですけど。ほらって1000円札をくれます。でも、滅多にありませんよ」
丈次は翔太に答えながら苦笑いした。
「俺がおまえに渡してる金では足りないのか?」
翔太は2年生の番長である丈次に毎月1万円を渡していた。中学生の1万円は、結構な額である。
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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