『フィスト・ダンス』 第159回 「藤田の依頼とは?」
<出世の条件>
1974(昭和49)年も12月、師走を迎えていた。
中学3年生にとっては、進路を決めなければならないタイミングである。
結局、翔太たち大中メンバーは全員が高校進学となった。
それを受けて、他校の番長グループもそれぞれ進学する高校を決め始めていた。
「じゃあ、英治は暁星で決まりだな。マーボと俺と頑張ろうぜ」
「おお、清正、よろしく頼むぜ。マーボなっ」
『テオジニス』のカウンターには、翔太を中心に右にマーボ、甲南中の藤田、清正、甲南中の伊達、晃一、左にトミー、和生、甲南中の三番格の久次、巧が座っている。
甲南中の副番長、伊達英治は、特に清正と仲がいい。
もとから大柄の伊達だが、身の丈は180センチを越え、体重は90キロにも成長していた。
番長の藤田に至っては185センチの大男になっている。
「で、正則が泉南、大輝が暁星、真也が徳栄だ」
「えっ、真也、徳栄かよ。こりゃ、楽しみだぜ。永野さんのあとは、ばっちりだ!」
喜んでいるのは、徳栄に進学する和生だ。
正則とは久次のことで、真也とは、その久次の次と言われる倉重のことで、大輝とは倉重と同格の神尾のことである。
この男たちは、大中以外の中学校に対しては王者だった。菊山道場の特訓、大中の面々との合同練習のおかげで、強さは他校の番長たちですら寄せつけない。
「で、みきお、おめえは行かねえのかよ?」
「おお、マーボ。卒業したら、そのまま不良になる。生学やってる3年間がもったいねえし、さっさと不良になった方がいいからな。ま、生学で遊んでみるのもいいんだろうけどよ。おまえらが不良になる頃には、舎弟もたくさん持つような兄いになってっからよ」
藤田は、マーボ、トミーの方を見てニンマリした。
不良とはヤクザのことで、他にも極道、遊び人、渡世人という呼び方が業界では一般的だ。
「で、どこにゲソつけるんだ?」
トミーだ。ゲソをつけるとは、その組の盃をもらうこと、組員になることを指す。
大中、甲南中の親にはヤクザが多いので、自ずと、業界の符丁が普通に話される。
「それなんだけどな。菊山君、ちょっと頼まれてくれないですか?」
藤田が背筋を伸ばして、神妙な面持ちで、翔太を見つめた。
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無期懲役囚、美達大和のブックレビュー
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