『フィスト・ダンス』 第161回 「これからの不良(ヤクザ)はゼニだ」

<不良に必要なもの>

「翔太君、みきお君、元気だった?元気いっぱいよね、2人とも。会いたかったでしょ、この京子さんに」

華やかな装いと芳香に包まれた京子は、一片の屈託もなく、微笑みと共に純一の隣に座った。
純一は、苦笑しながら、翔太と藤田に辛抱してくれよ、とばかりの表情だ。

「久しぶり、京子さん。そう、会いたかったよ。なっ、みきお」
「ええ、会いたかったです」

藤田も翔太に合わせている。

「わかる、わかる。京子さんのこと恋しかったって顔してるよ、2人とも」
「バカアマ、言い過ぎだろ、それは」

純一に言われても京子は無視していて、相変わらずで、笑えた。
メイクもバッチリで、もともと大きかった目もさらに大きく、高校生時代より頬もほっそりして、美人度も上がっていた。
真っ白なジャケットに、淡いピンクのシルクらしきシャツ、スカートも純白だ。
そこだけ光が当たっているような華やかさで、純一と並ぶと、美男美女カップルだった。
翔太は、たぶん、藤田も同じことを考えているだろうと想像していた。

「終わったの、大事な話は?」
「おお。みきおが俺の舎弟になってオヤジの若い衆になる。おまえも、しっかり面倒みてやってくれって、言われなくても、みるだろうけどな」
「もちろん。みきお君、頑張ってね。純一に言えないことは、なんでも相談してね。彼女が欲しいとかさ」
「バーカ、そんなことは、てめえでやるよ、みきおは。なっ」
「はあ、まあ、なんとか」

藤田は虚をつかれたように答えた。

「ううん、いいの、いいの。みきお君、いつでもいいからね。私ほどではないけど美人の気だてのいい子を紹介してやるからね。翔太君もだよ。遠慮なくね」

京子の独壇場である。翔太も苦笑いしつつ、応じるばかりだ。
こういう彼女といたら退屈はしないが、にぎやかだろうな、と思うと笑いが込みあげてくる。
京子はマイペースで、ウエイターを呼んでオーダーした。

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