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アートで脳が元気になる!?臨床美術の治療効果と心のケア

アートと治療についてのお話です
前回はアートセラピーについて考えてみましたが、今回はもう少し深掘りして「治療」としてのアート、「臨床美術」という分野について本を読んでみたのでシェアします。

今回参考にした本は 『臨床美術 痴呆治療としてのアートセラピー』 というもので、彫刻家の方々が始めた子ども向けアトリエがきっかけで、痴呆症(現認知症)の患者さんのケアとしての「臨床美術」という新しいジャンルが提唱されるようになったそうです。

「アートサイコセラピー」と「臨床美術」の違い

まず、アートセラピーには大きく2種類あることがわかりました

アートサイコセラピー:作品を分析して、感情や記憶を探るアプローチ。
前回の記事で触れていたアートセラピーはこちらということになります。

アートセラピー:アートワークそのものが創造で、分析はせずに、プロセスを楽しむアプローチ。臨床美術はこちらの後者にあたり、評価したり分析したりせず、ただ「描く」「作る」ことを通じて脳を活性化させる、プロセスそのものが創造である書かれていました。


右脳を活性化させるアートワーク

臨床美術では、右脳を刺激することがとても重要とされているそうです。右脳が刺激されると、脳全体が活性化され、特に左脳にも良い影響を与えるんだそうです。痴呆症では左脳にダメージが出ることが多いため、右脳からアプローチすることで間接的に左脳も元気にできるんですって。

「じゃあ、直接左脳を刺激すればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、実はそれがうまくいかない理由も説明されていました。例えば、計算問題や漢字書き取りなどの左脳を使う活動は、ストレスがかかるので逆効果になりやすいのです。「脳トレ」や「ナンプレ」などが人気なのも、ゲーム感覚でストレスを減らしているからなんですね。

アートワークだけでは足りない理由

「じゃあわざわざ臨床美術のプログラムに参加しなくても家で絵を描けばいいの?」と考えたのですが、臨床美術にはプロである臨床美術士の存在が欠かせないそうです。このプロセスには、「評価しない」「聞く」「褒める」といったポジティブな声かけが大切で、また一連の学習としての流れが右脳をより強く刺激して心を満たす効果を高めるのだそうです。単に「描く」だけではなく、このコミュニケーションが治療効果を支えるんですね。
私もワークショップを設計するのにこの部分とても参考になりました。アートワークだけではなく「心理的安全」が保たれ「左脳に左右されない活動」と「健全なコミュニティ」が効果をもたらすのだと思います。いかにこのことについてワークショップ設計に取り組めるかで効果に違いだでそうです。

「左脳で描く 」と「右脳で描く」何が違うのか?

この左脳で描くことと右脳で描くこと、具体的にどんな違いがあるのでしょう。
「左脳で描く」とは、例えば「りんごを描いて」と言われたときに、シンプルなシンボル(まるを書いて、ちょん)で表現すること。これは観察や感情よりも、他者にわかりやすく伝えることを意識している描き方です。

一方、「右脳で描く」とは、感情や観察を大切にした表現です。形やシンボルに頼らず、線や色、面を使って気持ちを描いていきます。子どもたちは小さい頃、ぐちゃぐちゃと自由に描きますよね。これは右脳優勢なんですね。しかし、小学校3年生ごろから、発達により「うまく描けない」「絵が下手だ」と感じる子が増えてくるそうです。

子育てや人間関係に活かせるアートセラピー

ここまで書いて、私は元中学校教員として、アートが苦手な生徒にたくさん出会ったことを思い出しました。「見るのは好きだけど、描くのは苦手」という声、大人からもよく聞きました。

右脳を刺激するアート活動は、認知症の治療に限らず、健康な人にも有効だと感じました。とくに子どもたちが「絵が下手だ」と感じる前に、何か手立てはないのかと切実に思います。今後も、脳の働きやアートの可能性についてもっと調べてみようと思います。

次回は、脳科学の観点からアートの効果を探っていきます。

アートが持つ力を、治療だけでなく、日常生活の中でも活かしていけたら素敵ですよね

参考資料
タイトル
臨床美術 リンショウ ビジュツ
痴呆治療としてのアートセラピー
著者
金子健二/編 カネコ,ケンジ
出版者
東京 日本地域社会研究所
出版年
2003.3

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