摩伽神さんと龍の石庭
物語をさがして vol.19
摩伽神さん。
まかじんさん、と読みます。
なんとなく、印象に残るふしぎな響きです。
どんな意味があるのかは分かりません。
「摩伽(まか)」の響きは般若心経の「摩訶波羅蜜多」(まーかーはーらーみーたー)を連想させます。
もしも仏教の言葉から由来しているのなら、「マカ(摩訶)」は大きいこと、優れていること、偉大なことを意味するのですから、「摩伽神」は「とても偉大な神様」といったことが示されているのかもしれません。
愛知県みよし市の福谷(うきがい)には、そんな「摩伽神さん」と呼ばれる石と、石にまつわる言い伝えがあります。
愛知県みよし市にある「八柱神社」へ
『みよしのむかし話』(三好町・三好町教育委員会)によると、摩伽神さんの石は元々は三好ケ丘駅の南の丘にあったものが、現在は場所を変えて今も残っているというので、見に行ってきました。
その場所は、八柱(やはしら)神社(愛知県みよし市福谷町宮ノ前1)です。
そして、摩伽神さんはこちらです。
どうでしょう。立派な石だと思いませんか。「摩伽神」と刻まれた文字の味わいがなんとも素朴で印象的です。
『みよしのむかし話』の記述だと、「高さ50センチ、幅30センチほど」
以前にレポートした「家康の床机石」(長久手)や「鶏石」(豊田)に比べると巨石とは言えませんが、それなりに重さはあるのでしょう。
ただし、現在は石を持ち上げることはかないません。きちんと下をコンクリートで固定してあるので、力比べに使われることもなさそうです。
この八柱神社、建立のはっきりとした年代はわからないのですが、明治時代に地域の神様が集められお祀りされていて、みよしでは一番古いお社ではないかと言われています。
境内には本殿のほかに、数々の神社が並んでいました。
屋根の下に並んでいる神社(ちょっと写真が暗いのですが)は、向かって右から順に
そして、左の2つの石碑は、「水の神様」とあります。
「摩伽神さん」と同じですね。
地域の神社とともに水の神様がとても大事にされてきたことが感じられるとともに、一度にとんでもなくたくさんのご利益にあずかれそうな、ありがたい場所ではないかと驚きもしました!
水の神様といえば・・・
面白いものを見つけました。
龍の石庭
龍の頭のような石に続いて、右手は龍の背のような石
植木でちょっと隠れていますが、平たい石が一列に置かれ、龍の背中が長く続いています。これは龍の石庭。
脇の案内板にはこう書かれています。
龍神をかたどった石庭。
大切な水を得るため、人の力ではどうしようもない天地のことを、神秘的で恐れ多い龍の姿で思い描いてきた先祖たちの祈りを見るような気がしました。
そのほかにも見どころたくさん
八柱社に隣接して、「薬師堂」があるのですが、なんと。そこも古い由来と昔話のあるお堂でした!
おまけにおまけに、摩伽神さんと薬師堂の間には、りっぱな杉の大木が!
根元には「ご神木」と書かれてありました。
八柱社は、偶然、春ごろに近くまで来たために、訪れて参拝をしたことがあったのですが、その時はこんな面白い伝説や見どころがあるなどぜんぜん気づかず通り過ぎてしまっていました。意識していないとそんなものかもしれませんね。
今回この取材で摩伽神さんを見に訪れたら神様が大勢いらして、だいたいどんなお願い事もカバーできるうえ、龍の気あり、伝説×2ありのかなり見どころ満載の場所だと分かり大発見をした気分です。
そして帰ってきて写真を見返して見ると、なんだか白くて細長い雲状のものが写真に写り込んでいました。
「やや、これは龍の気が写ったのでは!?」
…密かに色めき立ってしまいましたが、よくよく見てみると久しぶりに使った一眼レフカメラのレンズにカビが生えていたのが偶然写り込んでしまっていただけでした。がっくり。
史跡探索の強い味方!
最後になりましたが、摩伽神さんの現在の場所が分からなくて探していたときに摩伽神さんの写真をtwitterでアップされていた、「FDG」(Field Discovery Game)公式アカウント@FDG_official01の運営者で、代表の竹内鉄平さんに八柱社を教えていただきました。
博物館学芸員資格をお持ちで、各地の史跡・名所を巡っておられる竹内さんは、「摩伽神さん」についてこのように述べられていました。
摩訶迦羅(摩伽迦羅)天さんは、インド神話で破壊と再生を司る神様。
「まかじんさん」の名前が可愛いので油断していましたが、少し怖い神様かもしれないですね。背筋がぴっと伸びるような思いがしました!
「FDG」(Field Discovery Game)は地図をもとに徒歩やランニングで地域を回り、その土地の史跡や名所を探す、ロゲイニングという楽しそうなスポーツです。SNSでは各地の面白そうな史跡がアップされていてとても興味深いです。定期的にイベントも開催されており、ウェブサイトからエントリーできますので、ぜひ情報をチェックしてみてくださいね。