40年もの間、圧倒的に人生を損していたと思ったこと。
「これ、うちのネコ。めっちゃかわいくないですか?」と自慢したいところですが、先日ネコカフェで撮影した1枚です。泣。
3年ほど前、「ネコってなんであんなにかわいいねん」とネコ好きの友だちに話したら、「え、今ごろ気づいたん?」と返されました。そう、私は40代にして初めてネコのかわいさを知った者です。そのかわいさを知らずしてここまできたなんて、くやしくてたまりません。人生、めっちゃ損してません?
かわいさに気づいたきっかけは、たまたまインスタで見かけた動画。飼い主さんの膝の上にちょこんとのっている、クリーム色をしたマンチカンの男の子の爪切りシーンがおさめられていました。もともとネコが苦手で生態などよく知らずに生きてきたため、爪切りをする習慣すら知らずにいた私。
爪を切られるのがこわいのか、ぎゅっと目をつむりおとなしくしている姿は、まるで人間の子供のようではありませんか。ふさふさした毛並みや整ったお顔立ち。なんてかわいいの! と思いながら、私の目尻が最大限に垂れていた、次の瞬間。ぷちんという爪を切る音にびっくりしたのか、驚いてうわっと前のめりになるネコちゃん。たった一瞬の出来事だったのですが、その姿がたまらないかわいさで、あっという間に沼落ち。さきほど対面を果たしたばかりの画面越しのネコに、「えー、びっくりしたねぇ」と声高に話しかける私。気持ちわっるっ。
その後、動画を何度も何度もリピート再生。こわいわっ! ふと気づいたんですけど、あんなに同じ動画を見たのは、長年推していた韓国のアイドルグループがカムバしたとき、歌番組で1位になることを願い、必死でスミン(動画のストリーミング)して以来でした。約40年もの間、まったくもって興味のなかったネコという生き物が、一瞬にして私の人生にすーっと入り込んできたんですよ。なんておそろしい子っ!
ネコに対して苦手意識があったのは、実家では動物を飼っていなかったから。それに追い打ちをかけたのが、5,6匹のネコを飼っている友だちの家に行ったときのトラウマ。いや、行かんかったらええやんって話なんですけど、どうしても友人の家に集まらなければいけない用事ができたんですよね。ネコ=絶対にひっかかれるというイメージが強く、こわくて仕方ありませんでした。
それでも、いよいよ友だちのうちへ行かなければいけなくなった当日。普段は朝からもりもりごはんを食べる私が「いらない」なんて言うものだから、「え? 熱でもあるんじゃないの?」と額に手を当て温度を確認する母。ドラマのワンシーンかよ! って突っ込む元気もなく、「いってきます」と小声で言い、友達の家にとぼとぼ向かいました。
そして、友人宅にたどり着き、玄関の前で大きく深呼吸。「おはようございます」と言って扉を開けた瞬間、すでに1匹のネコが目の前に待機しているではありませんか。もうおるんかいっ! なんて突っ込む余裕はなく、「ひゃっ」と声を上げてしまいました。もう、泣きそうでした。「○○ちゃ~ん」と声にもならないような声で友人を呼ぶ私。ドタドタと足早に玄関まで走ってきて、「上がって、上がって」と笑顔で迎え入れてくれる友達。もしネコに飛びかかられたとしても、すぐさま助けてくれる救世主が現れた安堵感。このときばかりは、彼女が神に見えました。
居間に通され、「そこに座って」と言われるも、部屋をうろうろしている数匹のネコ。こたつの上にぴょんと乗り上げる光景を目にすれば、いつこちらにとびかかってくるかもわからないなという警戒心で、さらに身が固まります。正座をして微動だにして動かない私は、そう、まるで借りてきたネコのよう。きょろきょろしてネコの様子が目に入ると気が気ではないので、視線はテレビのみに集中。名曲「川の流れのように」を心の中で歌いながら、ネコに囲まれている恐怖心をまぎらわせていたのは、そのときに放送されていたのが、美空ひばりが亡くなったことを惜しむワイドショー番組だったから。
さすがに引っかかれることはなかったけれど、あのときの緊張感はいつまで経っても抜けず。また、ネコはコタツで丸くなると言われるくらいですから、接触する機会はとんとないまま成長したんですよね。こんなにも長い間、ネコの存在とは無縁でありながら、まさか一瞬でノックアウトされるなんて。
私がハマったインスタ動画のネコの飼い主さんには、今かわいい人間のベビーちゃんが誕生しています。そして、ハマったネコちゃんをふくめて3匹飼われており、忙しいなかでも微笑ましい動画をアップしてくださっています。動物と暮らしたことのない私にはとても新鮮だったのですが、赤ちゃんのころから生活を共にしていたら、全然平気なんですね。
ハイハイできるようになったベビーちゃんは、自分から追いかけたり触ろうとしたり……。生まれたときからネコがすぐ側にいるって、なんて幸せなんだーっ!! とうらやましくなっています。自分もネコがいる生活が当たり前であれば、かわいらしいという一言では表現しきれない、さまざまな感情を抱いていたのでしょう。「はー、ネコってほんまにかわいいわぁ」と、おばはんになって言ってる自分の姿、子供時代には想像もできへんかったわ。