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ジェーン・スー氏の回答に学んだ、親との上手な付き合い方。

いま、わたしは現在の家を引き払い田舎に引っ込み、親と同居すべきか否か考えあぐねている。二拠点生活をしているのは、その答えを模索するため。

反抗期もあったが、それは遠い昔の話。現在の親子関係は良好なほうだろう。各々、干渉しないと決めたわけでもなく、自然とそれが当たり前に。だが、いくら仲が悪くないとは言え、俺はジャイアンとばかりに幅を利かせるわけにはいかない。

たかが1、2ヶ月程度ならば問題なく一緒に生活できている。けれど、中学時代から寮生活を経験し、高校卒業後は親もとを離れ、実家暮らしとは一度も縁がないまま、気づけば何十年もの歳月が流れている。そんなわたしが、果たしていまさら同居し、ずっとうまくやっていけるのだろうかと不安がよぎるのだ。

実家で暮らしているとまず避けられないのが、親の生活に合わせなければいけない問題。自分は在宅フリーランスなので、尚さらだ。それくらい我慢しろよ! なのだが、お腹が空いているわけでもないのに、食事の時間になれば毎回断るわけにもいかず、まだ入浴したい気分ではないのに、お風呂の順番が回ってくるジレンマ。

生活スタイルはもちろん、多少なりとも意見の食い違いはあり、モヤモヤするときも。人と生活を共にした時期もあったが、困ったもので、いまはもうひとつ屋根の下で誰かとうまく付き合う方法がさっぱりわからなくなっている。

周りには、実家を一度も出た経験がない友人もいる。40年以上もの間、一体どのようにして円満に生活を共にしてきたのか、かねがね疑問だったので、実家暮らしの友人数名に、うまく付き合うコツについてたずねてみた。

ところが、である。すんなり回答を得られると思っていたにもかかわらず、みな一様に眉間にしわを寄せて「うーん」と黙り込むのだ。しばらく考えた後にようやく口を開き、「とくにうまくやっているわけではない」と言う。「父親とは仲がよいけれど、母親は気難しくて合わない」とか、その逆パターンの答えも。「同居なんだから、好き勝手にはできないよ」「我慢も多い」などの意見があった。意外にも家族との特別な仲のよさを公言する友人は一人もおらず……。

だが、なんとしても具体例がほしいゆえに食い下がり、よい方法はないものかと聞いた。伝授してもらったのは、「食事の有無は必ず伝える」「できることは自分でやったり、手伝ったりする」など。当たり前なのだが、みなそれなりに気を遣っているようだ。ここで見えてきた答えは、「親に寄り添い、合わせること」。

以前、コラムニストのジェーン・スー氏が、ラジオ番組『生活は踊る』にて似たような発言をされていた。氏のお母さまはすでに亡くなられており、お父さまのみご存命で同居はされていないそう。自身のラジオ番組やポッドキャストなどでは、我が道を行くお父さまとのエピソードを語られることがしばしば。

そんなスー氏のラジオ番組には、家族に関する悩み相談のメールも多い。あるとき届いていたのは、頑固で融通がきかない高齢の父親に悩む娘さんからの相談だった。

回答の言葉として印象深く残っているのは、「親だって一人の人間。尊重してあげなくちゃ。うちの親を見てたらわかるけど、ずっとその性格で80近くまで生きてきたのだから、いまさら親の性格は変わらないよ。相手を変えようとするのではなく、自分が変わること。全部じゃなくてもいいから、多少は譲ったり受け入れてあげたりするのも大事」。そのまま書き起こしているわけではないので、少し違うかもしれないが、そういったニュアンスの言葉だったと思う。氏の言葉は自身の体験を踏まえたうえで出てくるものが多く、すとんと腑に落ちる名言がもりだくさん。この日もラジオに耳を傾けながら、膝をぱちんぱちんと何度打ったことやら。

個の人間ではなく、どうしても親という括りで見ていたため、付き合い方について難しく考えすぎていたのではないかと思った。生まれたときから実家暮らしをしている友人たちは、自分でも知らず知らずのうち、自然な形で親を尊重できていたのだろう。わたしは完全に揉めずにやっていかなければいけないプレッシャーを自らにどんどん与えていたわけだが、上手な付き合い方のコツを友人とスー氏の回答によって答え合わせでき、気持ちがずいぶんラクになった。

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