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西岡壱誠が語る「受験生なら知っておくべき文学的名作3選」


皆さんこんにちは!
ドラゴン桜塾塾長の永田耕作です。 

今回は、『ドラゴン桜2』編集担当であり現役東大生作家でもある西岡さんに、日本や世界にある文学作品の「名作」について語ってもらいました。
 
皆さんは、「名作」と聞くとどのような作品を思い浮かべますか?
 
世の中には非常に多くの物語があります。例えば、日本なら芥川龍之介や夏目漱石、川端康成や三島由紀夫など、そして世界に目を向けるとシェイクスピアやヘミングウェイなど有名な著者は数多く、それぞれが後世まで語り継がれる名作を残しています。
 
この名作については、著者や内容を知っておいた方が人生が豊かになる、というだけでなく、受験においても非常に役に立ちます。
 
わかりやすい例で言うと、2022年の共通テストの国語第1問で、前書きに

次の文章は、宮沢賢治の『よだかの星』を参照して「食べる」ことについて考察した文章である。 

とありましたね。
 
もちろん作品を知らなくても問題が解けるようにはなっていますが、『よだかの星』を読んだことがある人なら、筆者がどのような意図で引き合いに出しているのかがよくわかり、文章全体の理解もスムーズにいったはずです。
 
このように、現代文や古文などの国語はもちろんのこと、歴史や地理などの社会科目でも問題文で引用されたり、例として引き合いに出されたりすることがあります。
 
例えば、「死と生」についての話がテーマとして挙げられている際に、「死生観」というものが中世から今に至るまでにいかに語られてきているのか、という知識は非常に重要になりますよね。
 
「この作品ではこのように語られている」など、名作についての知識があると理解に差がつく問題が出題されることが珍しくないのです。
 
つまり、名作というものは「教養」として、レベルの高い大学を志望したり、難しい学問を勉強したりする際には身につけておく必要があると言えます。
 
周りの東大生と話していても、文系理系問わず賢いなあと感じる東大生は、そのような文学作品の知識がたくさんあります。
 
好奇心が旺盛であることが、他の学びにもつながっているということですね。
 
これらのことから、西岡さんは「東大に入るなら名作は読んでおいた方が良い」と断言しています。
 
そして、数多くある素晴らしい物語の中でも特に厳選をした珠玉の作品たちと、その中にある名言や教訓をまとめた本が、先月発売された『名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50』です。 

今回は、この本の中でも紹介されている超有名な3つの作品について、こちらの記事でも紹介します。
 
元々知っている人も知らない人もぜひこの記事を読んで、文学作品についての教養を深めていきましょう! 


①坂口安吾『堕落論』 

まずは、日本の文学者である坂口安吾の作品です。
 
坂口は無頼派(終戦直後の混乱期に,反権威・反道徳的な作風で時代を象徴することになった作家たち)の代表格で、終戦して半年が経った1946年の4月に、日本の中でも指折りの名作の一つである「堕落論」を出版しました。
 
この「堕落論」は、日本文学における重要な評論の一つとされています。
 
戦後間もない日本の社会や価値観の変化に直面し、敗戦直後の日本人に「生きよ堕ちよ」と語りかけた、人間の本質や生き方について鋭く問いかけた作品です。
 
この作品は出版されてたちまち様々な反響を呼び、戦後の日本文学や思想に深い影響を与え、これまでに多くの入試問題でも取り扱われています。
 
この作品において、坂口は「堕落」を否定的な意味で捉えず、人間の本性に根ざしたものであるとして肯定的に描写しています。
 
戦争が終わり、旧来の価値観や道徳が崩壊した状況の中で、安吾は偽りの秩序や規範にしがみつくのではなく、自らの本能に従い、堕落することで新しい生き方を模索すべきだと説きました。
 
人間が本来持っている欲望や弱さを認めることで、逆に自己の自由や真実の姿に近づけると考えたのです。
 
戦後の日本の中には、戦死した家族を持つ人や、逆に戦死せず残ってしまった特攻隊の人がおり、これからどう生きていけば良いのか、と途方に暮れる人がたくさんいたことでしょう。
 
そんな人たちに、「堕落」していいのだ、と。そんなもんなのだ、と。そんなメッセージを伝えているように感じます。
 
どんどん堕落していくが、それでいいのだ。と。この考え方は、戦後の日本に勇気を与えたのではないでしょうか。
 
このような、当時の人々の考え方、心の動きをダイレクトに読み取ることができるのが、名作、文学作品の良さと言えるでしょう。
 
ちなみに、本の中では坂口安吾と同じ無頼派に分類される、太宰治の代表作『斜陽』の論評も収録されています。
 
『堕落論』と比較して読んでみるとさらに理解が深まることでしょう。 


②ドストエフスキー『罪と罰』

続いては、ロシアの近代作家ドストエフスキーの作品です。
 
彼の代表作の1つに、『罪と罰』があります。

『罪と罰』は、1866年に発表されたロシア文学の古典で、深い心理描写と哲学的なテーマが特徴的な長編小説です。
 
この作品は、貧困に苦しむ青年ラスコーリニコフが、自分の思想に基づいて正当化される「許される罪」を行うことを試み、老女の高利貸しを殺害することから物語が展開していきます。

しかし、彼は次第に罪の意識に苛まれ、自らの行動と向き合う苦悩を通じて、道徳や人間の本質について深く探求することになります。

『罪と罰』では、貧困、不正義、人間の自由意志とその責任などが描かれ、登場人物ラスコーリニコフの葛藤を通じて、善と悪、そして罪と贖罪の意味が問われます。
 
また、彼を取り巻く人々との交流を通して、同情、愛、赦しの力が浮き彫りにされ、読者に深い問いを投げかけます。

ドストエフスキーがこの作品で何を伝えたかったのかは永遠の議論ですが、人間の内面と社会的な現実を鋭く描き出し、読者に倫理的な選択の難しさと、人間が抱える内面的な闘いの複雑さを提示しているのではないかと言われています。

今から150年以上も前の作品ですから、当時の人々の考え方などを完全に理解することは非常に困難です。
 
現代とは違い映像や音声などもあまり残っていないため、このような作品を通して理解することしかできないのです。
 
文学作品の解釈は人それぞれだからこそ、文学には深みがあり、これだけ今でも多くの人に読まれているのですね。
 
だからこそ、様々な作品に触れることが大切です。日本国内外に関わらず、いろいろなジャンルの名作をぜひ楽しんでみてください。

 

③ヴィヤーサ『マハーバーラタ』

最後は、インドの二大叙事詩の一つである「マハーバーラタ」についてです。

このマハーバーラタは、「ラーマーヤナ」と合わせて非常に有名であるため、世界史の教科書などでも見たことがある人は多いでしょう。
 
しかし、実際に内容を詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
 
「マハーバーラタ」は、世界で最も長い文学作品の一つとされています。
 
その長さは、全18巻にわたる約10万の詩節に及び、聖書の約4倍もあると言われています。
 
紀元前400年頃から紀元後400年頃というとても長い年月をかけて成立したとされ、サンスクリット語で記されています。
 
物語は、バーラタ族に属する二つの王族、クル族のパーンダヴァ(パーンドゥ王の五人の息子たち)と、彼らの従兄弟であるカウラヴァ(ドゥリヨーダナを筆頭とする一族)との間で起こる壮大な戦争を中心に展開されます。
 
戦争の発端、葛藤、そして最終的な大決戦である「クルクシェートラの戦い」までの物語が描かれており、登場人物の心の葛藤や成長、友情、家族愛、裏切り、欲望、そして神々との関わりが詳述されています。
 
物語には、戦争の詳細な描写だけでなく、インド哲学や倫理、宗教的な教えが含まれています。
 
人間の義務や自己の本質についての深い教えが語られ、インド哲学の中心的な思想の一つとなっているのです。
 
そのため、この作品はインドだけでなく、広く世界中に影響を与えており、数多くの文学、芸術、演劇、映画などで引用され、再解釈され続けています。
 
また、現代社会の中でも道徳や倫理に関する教訓として参照されることが多い作品です。
 
この作品は、今回紹介した中でも特段、世界的な知名度が高いものです。
 
そのため、簡単なあらすじだけでも知っておくと、受験だけでなく、世界の様々な価値観や文化的背景を理解する上でも活きてくるのではないでしょうか。 


おわりに 

今回は「西岡壱誠が語る『受験生なら知っておくべき文学的名作3選』」ということで、日本や世界のさまざまな名作について紹介してきました。
 
僕が塾長を務めるYouTubeチャンネル「ドラゴン桜塾」では、今回紹介した以外の作品も含めて、西岡さんがより詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください!

また、今回紹介したもの以外にも『名作に学ぶ人生を切り拓く教訓50』では様々な作品を扱っていますので、今回興味を持ってくださった方はぜひお手に取ってみてください! 

今回の記事は、ここまでとなります。
それではまた次回の記事でお会いしましょう!

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