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『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀4』 第12話「魔族の誇り」

 再び魔界に降り立った殤不患の前に現れ、共闘を持ちかける凜雪鴉。封印された裂魔弦を救い出し、浪巫謠の行方を知る二人だが、その前に刑亥が現れる。葛藤の末、魔王の征く道の障害になるとして、刑亥は三つの魔宮印章の力で不完全ながら魔神の力を宿し、三人に襲いかかる……

 第4期も全13話だと思いきや、もう最終回でちょっと驚いた今回。最終章が控えているとはいえ、残り一話で何を描くのか――と思っていましたが、冒頭から今期本当に久しぶりの殤不患と凜雪鴉の再会は、やはり胸躍るものがあります。
 それにしてもメリー・ポピンズよろしく降りてきた殤不患を平然と出迎える凜雪鴉といい、(睦天命に聞いていたであろうとはいえ)魔界で待ち受けていた凜雪鴉を見ても驚かない殤不患といい、どちらもそれぞれのことをある意味信頼している感じなのが微笑ましい。しかし冷静に考えれば、殤不患は魔界についてほとんど知らない状況――そもそも浪巫謠が魔族との混血なのを初めて聞いたくらいなのですから。


 それでも、ほとんど全く動じないのが殤不患の殤不患たる所以。生まれがどうであれあいつは人として正しい道を志してた、流れている血が何色だろうと関係ない――こんな好漢過ぎる殤不患に、妙にマジな顔で反応を見ていた(ように澱んだ目には見えた)凜雪鴉もニッコニコ。「一度友誼を結べば、人も魔物も関係なしか。全くお前は私の見込んだ通りの男だよ」とやたらと馴れ馴れしく殤不患に近付いたと思えば(初見で見逃していましたが、よく見るとさりげなく殤不患と背中合わせに寄りかかる凜雪鴉)、殤不患の方も「よせやぁい」と言わんばかりのリアクション。
 拙者、互いに主義主張は正反対で馴れ合わないけれども、相手の能力や信念には深く信頼していて、いざ戦いの時には背中を預けられる関係性大好き侍――という向きにはたまらない描写ではないでしょうか。

 そんなわけで冒頭でもう満腹になってしまったのですが、この後、えらく雑に(本当に雑に)裂魔弦を逢魔漏から解放した凜雪鴉たちの前に現れたのは刑亥――前回、凜雪鴉の出自に驚きつつ、勝利のためとはいえ魔族に新たな道を強いる魔王と、ある意味魔族の核である享楽を求める凜雪鴉と、両者の間で揺れていた刑亥ですが、ついに魔族の未来を選び、凜雪鴉抹殺に動き出したのです。

 しかしもはや刑亥=ポンコツという印象がついたところに、主人公二人+裂魔弦という状況で、彼女に勝ち目があるとは思えませんが――そこで取り出したのは三つの魔宮印章。四つ揃うと新たな魔神が現れるというのは、使うと魔神に転生できるということのようですが、刑亥は三つという不完全な状態ながらこれを己に使用、半分異形の姿と化して襲いかかります。しかしこれ、神蝗盟の二人がブーケ代わりに置いていったものにガチギレして文字通り放り投げた凜雪鴉の失策なわけですが、それを一瞬で見抜いた殤不患はさすがというか何というか……

 不完全とはいえさすがに今回のラスボス、主人公サイドでは最強クラスの三人を向こうに回してむしろ圧倒する刑亥。しかしこんな時に頼りになるのが凜雪鴉です。切り札としてしれっと取り出したのは、神蝗盟カップルが置いていった二振りの神誨魔械(同じブーケ代わりでも、印章は捨ててもこっちは持ってるのな……)。そうきたか! とこちらが驚いているところに、裂魔弦と怒雷斧を手にした殤不患が道を切り開き(ここで萬将軍の技を借りる殤不患と、その動きに重なる萬将軍のシルエット!)、そして玲瓏劍を手にした凜雪鴉が刑亥に肉薄し――第一期ラスト以来、本当に久しぶりの天霜・煙月無痕が炸裂! いや、以前は舐めプの寸止めだったものが初めて完全な形で、しかも神誨魔械でもってクリーンヒット、その威力は無痕どころか豪快に真っ二つ……

 かくて斃れた刑亥ですが、凜雪鴉に作中ほとんど初の本気の剣を使わせたのは、以て瞑すべきと評すればよいでしょうか(「殺無生にあの世で自慢するといい」などと、この期に及んでなお引き合いに出され、辱められる殺無生くん……)。その一方で、悪党は殺さない凜雪鴉が初めて完全に斬ったことには、色々と考えさせられるものがありますが……

 しかし刑亥は捨て石の役割を果たしたと言うべきか、その間に魔王と阿爾貝盧法は地上侵攻の準備を固め――そして禍世螟蝗はついに嘲風に自らの正体を明かし(ここで幽皇としての静かな喋りから、徐々にはま寿司のハロウィン限定音声のようなドスの効いた声にかわっていくのがお見事)、娘に神蝗盟の法師としての紋章を与え、それぞれに最後の戦いに臨む態勢を整えます。
 もっとも嘲風の場合、与えられたのがよりによって空席になっていた蠍の紋章の上に、間違った魔法少女(謎の指ハートマークポーズ付き)のようなビジュアルなのが、原作者的に不安ですが……

 そして物語の真の決着は全くつかないまま、二ヶ月後の劇場版、最終章に続く!


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