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【総選挙】日本政治は無理ゲーかもしれない

初対面の人と会う時やビジネスの場では、政治宗教の話は避けるというのが日本社会の暗黙のルールだ。それは、要らぬ軋轢は避けようという先人たちの知恵なのだろう。

しかし、ここはnoteの世界。自分の書きたい事を自分の書きたい時に書くことをモットーに活動している場だ。

ここには何のタブーも存在しない。公序良俗に反することや誹謗中傷以外は何を書いても自由なはずだ。

そこで、今回は総選挙の話だ。


総選挙の情勢

第50回衆院選挙の投開票が、2024年10月27日に迫っている。

各社の報道を見ると、与党・自民党が大苦戦しており、単独過半数はおろか、連立を組んでいる公明党と合わせても与党全体で過半数を維持できるのかが微妙な情勢らしい。

それだけ、自民党の裏金議員とその後のいい加減な処分結果に国民の怒りが渦巻いていることの表れなのだろう。

内閣支持率低下により追い込まれて退陣した岸田総理の後を受けて選出された石破総理の選択も、ちょっとまずかったように思う。

就任直後に野党間の選挙協力体制が整う前に、ドサクサに紛れて選挙するのが得策だとばかりに解散してしまった件だ。

もう少し時間をかけて、裏金議員を徹底的に排除して、小泉総理が郵政解散時にやったように刺客を立てるなどすれば、今ごろ内閣支持率が爆上がりする別の世界線を辿っていたかもしれない。

党内基盤が弱いから、やりたくてもやれなかったのが現実なのかもしれないが…だとすれば石破内閣に多くは期待できまい。

しかし、仮にも与党全体で過半数割れとなってしまえば、政権の枠組みが変わり、石破内閣が早々に総辞職に至る可能性が高まる。

一気に政治が流動化しかねない緊迫した情勢である。


選挙後に予想される動き

今回の選挙の勝敗ラインは、過半数の233議席だ。現与党である自民党公明党を合わせて233議席を1議席でも上回れば与党の勝ちだ。

過去の選挙でもそうであったが、選挙後は公認漏れした保守系候補で当選を果たした議員を自民党会派に招き入れ議席数を積み増す動きが活発化するだろう。

議院内閣制では衆議院の議員数が政権の命であるから、ポストと引き換えにした必死のリクルートが始まる。

自民党会派に復帰する保守系候補の中には、保守分裂の選挙区で勝ち残った者の他、裏金議員で生き残った者も含まれるかもしれない。

裏金議員で再選を果たした議員は間違いなく「これでみそぎは済んだ」うそぶくことだろう。

毎度目にする選挙後の醜い光景だ。


与党≧233議席の場合

そのような策を弄した結果、何とか与党≧233議席を満たせれば、石破内閣は継続することになる。

しかし、ギリギリ過半数の勢力では実質的な審議を担う衆議院の各委員会で議長職を独占できないため、政権運営がかなり難しくなるのは間違いない。

ひょっとすると、来年の参議院選挙を前にして早々に退陣するパターンもあるかもしれない。

選挙後に内閣改造は間違いなくあるだろうが、旧安倍派議員や総裁選で決選投票を戦った高市議員をうまく政権内に取り込めないと、自民党内から倒閣運動が起きかねない。

状況を打開するために、国民民主党維新に与党入りを打診する可能性が高いが、両党ともそう易々とは応じないだろう。

それは、与党が過半数を確保している状況で安易に連立入りすれば、たちまち支持を失い数年のうちに党が消滅してしまうかもしれないからだ。

これは、歴史が証明していることでもある。

いずれにしても、その後の政局は選挙結果とは無関係に進んでいく。いつの間にか、選挙を戦った顔=石破総理ではない人物が日本の総理大臣の椅子に座り、権力を持つかもしれないのだ。


与党<233議席の場合

少数与党のままでは、重要法案が通らない、内閣不信任案が可決されやすくなるなど極めて政権が不安定となるため、新たな連立の枠組みが模索されることとなる。

立憲民主党を中心とした野党連合は、共産党とは組めないと維新がハッキリ言っているため、成立し得ないかもしれない。

そうなれば、現与党の自民党公明党に加えて、政策の比較的近い維新もしくは国民民主党との連立が画策されるだろう。

どこも過半数を確保できない状況においては、政治的空白を避け政権を作り出す政党としての本来の責任を前面に押し出せば、維新もしくは国民民主党の連立入りはあり得ると思う。

その場合の政権の顔は敗軍の将である石破総理ではなく、間違いなく別の人物だ。

小泉議員は、選挙対策委員長として責任を取らされるだろうから出番はない。世間的には高市議員が最有力とみられているが、誰が政権の顔となるかは、自民党の中の主流派と非主流派の選挙後の勢力バランス次第だと思われる。

それでも政権の枠組みがなかなか固まらない場合には、自民党玉木総理(国民民主党の党首)や馬場総理(維新の代表)のカードを切る可能性も考えられる。

要するに少数政党の党首を首班に押し上げて、政権の座に留まろうとする策だ。

村山内閣の時の日本社会党、自民党、新党さきがけの連立政権が、まさにこの構図であった。

いずれにしても、与党が過半数割れした場合には、より大きな政局の混乱とドラスティックな政権の枠組み変更が起きる可能性が高い。

この場合も、選挙結果とは無関係に政局は進んでいくだろう。

各議員や政党間の思惑や駆け引きにより、総選挙では首班に名乗りを上げていなかった人物が、日本の総理大臣の職を担うのだ。


日本政治は無理ゲー

選挙後に予想される動きについて妄想を交えて語ってみたが、改めて日本の政治には絶望感を禁じ得ない。

それは、選挙結果とは無関係に政権の枠組みや総理大臣が決まっていくからだ。

それぞれの議員や政党集団の思惑や打算により政権が左右される。そこには主権者たる国民が関与することは一切無い。

いや、一切無いは言い過ぎた。

国民は総選挙により国会議員を選出している。その結果として政権交代が起きる可能性は確かに存在している。今回の総選挙でもそれが取りざたされている。

その意味では国民が、政権の枠組みに対して一定の関与をしていることは間違いない。

しかし、日本国民には総理大臣を選出する権利がないのだ!

今の日本の政治の仕組みで、総理大臣を選出する権利があるのは国会議員だけだ。国民にその権利はない。

国民の権利は、あくまでも国会議員を選出する権利であって、総理大臣を選出する権利ではないのだ。

自分たちの代表である為政者を自分たちの手で選出できないという意味において、そもそも日本政治は無理ゲーなのだ!

若い世代の投票率の低さが昔から問題視されているが、その根本原因は、日本政治が無理ゲーのためであると筆者は考えている。

学校教育で民主主義の素晴らしさを学び社会に出た若者が、私利私欲で蠢く議員たちの都合で政権の枠組みや為政者たる総理大臣が決められていく政治の実態を知ったら、絶望しか浮かばないのは当然のことだ。

いくら投票に行きましょうと呼びかけられても、若者は行く気になれない。何しろ、日本国民には総理大臣を選出する権利がないのだ。


無理ゲーは仕組みの問題

どうして日本政治は無理ゲーなのだろうか?

政治家の倫理観が足らないからダメなのだろうか?
自分も若い頃はそのように考えていた。政治家とは何て腐った連中なのだろうか?そう思っていた。

しかし今ならわかる。全ては政治システムの問題なのだ。

日本の政治は議員内閣制を採用している。

議員内閣制では、立法府の構成員である国会議員を国民の投票で選ぶ。一方で、行政府の代表である総理大臣は国民ではなく、立法府の構成員である国会議員が選ぶ仕組みだ。

「二元代表制」という地方政治の仕組みを考える, 野中尚人, イミダス・集英社, 2011.4.8

議員内閣制では、行政府の代表である総理大臣国民が直接選べないシステムのため、民意が直接的には反映されにくいのだ。

国民の知らないところで総理大臣が決まっていく、その根本原因は政治システムそのものにあるのだ。

これでは、いくら人の意識を入れ替えても状況が変わることはない。当たり前の話だ。

総理大臣国会議員が決める。だから、総理大臣国民を見ずに国会議員の方ばかり見ているのだ。

総理大臣国会議員が決める。だから、国会議員は派閥を作ったり、互いに政治的な貸し借りを繰り返して多数派工作をするのだ。

総理大臣国会議員が決める。だから、若者は政治に絶望しているのだ。

全ては政治システムそのものに原因があるのだ。

その結果、さまざまな問題を招いているのだとしたら、対応策としては政治システムを変えるしか手段はない。

具体的には二元代表制を導入すればいいのだ。

二元代表制の具体例はアメリカの大統領制で、日本では地方自治体の政治システムが二元代表制を採用している。

二元代表制では、立法府の構成員である国会議員行政府の代表である大統領の両方を国民の投票で選ぶ仕組みだ。

下図は地方自治体の場合の模式図だが、国政においても同様だ。

「二元代表制」という地方政治の仕組みを考える, 野中尚人, イミダス・集英社, 2011.4.8

二元代表制では、行政府の代表である大統領国民が直接選ぶシステムのため、民意が直接的には反映されやすい。

議員内閣制では、選挙に依らずして行政府の代表である総理大臣がコロコロ変わる例が多いが、二元代表制は、そのような齟齬が発生しないシステムだ。

そう言えば、石破総理も国民が選挙で選んだ総理ではない。第一党である自民党の総裁に選ばれたため国会の数合わせで総理大臣に就任したに過ぎない。

このように、国民の知らないところで選ばれた総理大臣に信頼がおけるかは大いなる疑問だ。

二元代表制で選ばれた大統領なら、党の総裁選挙で訴えていたことを総理大臣に就任した途端に引っ込めるような事態も発生しないだろう。

むろん政治システムには、それぞれ一長一短があるのは承知の話だ。二元代表制にすれば全てが解決するという話でもない。

しかし、現在の深刻な政治不信の多くは払拭するのではないだろうか?

また、人口減少の進む環境下で国際社会の中でジリジリと存在感を失いつつある日本を復活させ、再び成長路線に戻すには強力なリーダーシップが欠かせない。

そんな時代的な要請からも二元代表制への転換が不可欠と考えている。

しかし、翻って今回の選挙での各党の訴える政策を見ても、二元代表制への転換を掲げる党は皆無だ。

この状況に、二重の意味で自分は絶望を覚えてしまうのだ。


相互フォロワーさんの記事

フォローさせていただいている方の記事を振り返ってみたら、選挙に関連した記事やつぶやきをしている方が意外といらっしゃった。

皆さん、それぞれの立場でそれぞれに発信している。参考になる考え方も多い。

日本でも、普通に政治が人々の話題にのぼる日がくればいいのになと思う。

ここまで書いて何だが、選挙にはアナウンス効果というものが知られている。

報道で与党惨敗とあまりに報じられると、判官びいきではないが揺り戻しが生じて、与党が議席を積み増すパターンが過去にもよくあった。

大山鳴動して鼠一匹というオチもあるかもしれない。

私は昨日期日前投票を済ませた。

投開票は、もう日付が変わったから本日(10/27)だ…結果や如何に。


※この記事では「第50回衆院選挙」と「日本の政治制度」について考察していますが、記事内容はあくまでも筆者の個人的な見解です。
当該テーマについては、異なる見解が存在することが予想されますが、筆者の見解と同様に、それらの異なる見解も尊重されるべきだと考えています。
相手を罵ったり言論封殺しようとするのではなく、自分の見解とは異なった見解を相手が述べる権利を全力で守るのが真の民主主義だと信じています。

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
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