あと何回
家から大学までの道のり。
電車で一時間と少し。
最初は戸惑った電車の乗り換えも今では慣れたものだしなんなら出発の時刻までもを覚えた。同じ時刻には毎日同じ人たちが乗っている。いつもの空間がそこにはあった。
4年間はあっという間だ。
高校での3年間も驚く程に早かったからきっと大学も早いんだろうとは予想はしていたが、こう、実際に4年が経った今、想像以上に体感として凄まじい。
左から右へと流れて行く景色をボーッと眺めていると今大体どのあたりにいるのかがわかる。
自分の住んでいる所が田舎だという事もあるが街に近づくにつれて町がどんどん変化して行く。電車に乗ると昔はすぐに寝るか携帯をいじるかの二択だったけれど最近はボーッと何も考えずに外を眺める事が多い。
ふと思った。昨日も、今日も、これまでも、ずっと見てきたこの景色はあと何回見られるんだろうか。
きっと僕は社会人になったら都会へと移り住むだろうからこの車窓からの景色を見られるのも残り少ないだろう。
…。
そう思うと自分の人生の折り返しに立っているあと何回がある事に気がついた。
親に会うのはあと何回だ?
社会人になってしまったらきっと会う回数も減るだろう。
今の友達と遊べるのはあと何回だ?
きっと社会人になったら疎遠になってしまう友達も出てきて、時間も限られる中遊ぶ回数はぐっと減るだろう。
あと何回だ?
あげ始めたらキリがないが僕の人生において残り少ないものがきっと多くある。
気がついているものもあればそうでないものも。
よくいつ死んでも後悔のないように、なんて例えが使われるが別れは死だけではなく、環境の変化によっても発生する。
普段時間というものを雑に扱っている僕が言うのもどうかと思うが後悔しない為には毎日を必死に生きる他ないんじゃないか。
でも、そんな人生きっと疲れてしまうから感謝の気持ちだけは忘れずに流れに身をまかして生きて行くことになりそうだ。
「ドアが開きますご注意下さい。」
そのアナウンスで僕は目を覚ます。
考え事をしている途中にどうやら眠ってしまっていたらしい。
電車で居眠りができるのもあと何回なんだろうか。
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