夢落ち
大学3年の夏休み、僕は実家に帰るでもなく3ヶ月前に付き合い始めた彼女と築40年程の六畳で月3万と少しのアパートに篭りっぱなしの日々を送っていた。
僕は、朝が弱い。
今日、彼女はどうやら学校に用事があるらしく朝早くから鏡の前に座り自分の顔と睨めっこしていた。
「何時頃に帰ってくる?」
僕は意識半分で布団から彼女に声をかけた。
「昼過ぎには帰るかな、終わったら連絡するね。」
横目で僕が起きた事を確認しつつ、彼女は着々と自分の顔に彩りを加えていく。
化粧は一つのアートだなぁなんて事を思いながら僕は眠気に負けて気を失った。
再び目を覚ますと丁度彼女が家を出て行く所だった。
「じゃあ行ってくるね」
「うん、気をつけて、いってらっしゃい。」
声に出して言えたのか定かではないが僕の記憶が定かならばきっと言ったただろうが、確信はない。
そして再び僕は眠気に任せて目を閉じた。
僕は慌てて目を覚ました。
よく寝坊をする僕にはわかる、この感覚は寝過ぎた時の感覚だ、僕は慌てて時計を見た。
「17時03分」
間違いなく時計は17時03分を指しているのだが、彼女の姿は無く、部屋を見渡してみると彼女のものが全て無くなっている。
「冗談だろ…?」
僕は慌てて枕元に置いてあるiPhoneを拾いあげ彼女の連絡先を探した。
「嘘だろ…?」
LINEどころか、念の為に聞いておいたメールアドレス、携帯番号までもが全て消えている。LINEはまだしも携帯番号が連絡先の欄から消える事はあるのか?そもそもなんで連絡一つ無しに居なくなったんだ?もしかしたら僕が寝ている間に一度家に来た?僕は気づかなかったのか?
ただ不思議と僕は彼女を探そうとしなかった。さっきまであれほどまでにおかしいと思っていた事ですらまぁそういう事もあるかと思ってしまっていた。
僕は慌てて目を覚ました。
よく寝坊をする僕にはわかる、この感覚は寝過ぎた時の感覚だ、僕は慌てて時計を見た。
「12時03分」
…あれ?
17時03分だったはずの時計が12時03分になっている。慌てて部屋を見渡すと、全て無くなっていたはずの彼女のものも元どおりだ。
…。
そこで初めて僕は夢を見ていた事に気がついた。
ふと枕元のiPhoneをみると通知センターに一件の通知が入っている。
「今から帰るね。」
良かった…彼女は居なくなってなんかいなかった。安心すると一気に体中の力が抜け、どこからか眠気が襲ってきた。
僕は再び誰も居ない部屋で目を覚ました。