適性検査と共通テスト
公立中高一貫校入試と大学入学共通テストは、おなじ土俵で論じられることは少ないようですが、実は重要な共通点があることにお気づきでしょうか。
・情報収集する力
・思考判断する力
・言語表現する力
どちらの入試問題でも、入試問題を前にして、その場で情報収集し、その場で思考し、その場で判断し、その場で表現(解答)する力が求められます。
共通テストは、これまでのセンター試験や共通一次とは違い、知識や解法をめいっぱい詰め込んでおいて試験が始まったらそれらを時間の限り吐き出すように答えていくだけで攻略ができるような入試ではなくなりました。
これに先行したのが公立中高一貫校の適性検査です。代表的なのが都立中高一貫校の適性検査です。そして、今では多くの都道府県の公立高校の学力検査(入試)もこの公立中高一貫校の適性検査に近づいてきています。
公立高校の学力検査と大学入試共通テストで、どちらが先に公立中高一貫校の適性検査に近づいたかというと、それは都道府県にもよりますが、おおむね公立高校の学力検査と考えておいてよいでしょう。
つまり、共通テストの適性検査化は、来るべくして来たことなのです。
もちろん、教科ごとに教科の基礎となる知識や技能は必要ですが、それだけでは解けない問題が出題されるようになってきています。あえて言えば、総合的な学力の完成度が試されるような入試問題になってきているのです。
*東京都の都立高校共通問題はまだ本格的には適性検査化していません。過去に出題ミスや採点ミスが起き、その対策としてマークシート化をすすめたことの影響もあるかと思います。
*公立高校の適性検査化はむしろ都立高校以外で鮮明になりつつあります。それは全国の公立高校の入試問題をつぶさに分析すればわかります。もちろん都道府県によって差はかなりあります。共通テストとうりふたつの問題が(中学生向けにしながらも)多く出題されるようになってきています。
知識情報へはインターネットなどから容易にアクセスできる時代になりました。このため新しい学習指導要領では、そうした知識情報を活用できる能力の育成に軸足が移りました。
知識があっても活用できないのであれば、知識を持ち合わせていないのとおなじであることを、だれもが直感的に理解する時代になったのです。
悲しいかな単なる詰め込み式の対策ではもはや爆死するしかないのです。
文部科学省が新しい学習指導要領で求める、
思考力
判断力
表現力
が、まさに現実として具体的に求められるようになってきています。
・漢字の読み書きができる
・語彙力がある
・計算ができる
・公式を知っている
・解法を知っている
・英単語・英熟語や古文単語・係り受けを知っている
・英文法や古典文法や漢文句法を理解している
・用語や年代や場所を知っている
このような古い学力観は、新しい学力観においては、それだけでは高く評価されなくなりました。つまりテストで得点できなくなりました。
知識や技能が十分に備わっていることを前提としつつ、
思考力
判断力
表現力
を発揮できるかどうかが、広く深く問われるようになりました。
もっとも分かりやすいのが、都立小石川などの難関公立中高一貫校の社会の入試問題と、共通テストの地理(地理探求)の問題です。
知識や技能だけでは、まったく太刀打ちできません。
知識や技能がなければ、これまた太刀打ちできません。
思考力と判断力と表現力が問われます。その前に情報収集力が問われます。
入試問題のリード文やデータや資料などに盛り込まれた情報を適切に正確に漏れなく読み取れるかどうかが問われます。
受験業界でかつて猫も杓子も口をそろえて論じていた「英語4技能」が、今ではすっかり話題にならなくなりました。共通テストの英語で問われているのは、英語においても思考力と判断力と表現力であることがわかってきたからです。
巷の予備校関係者の多くが共通テストの英語は難しくなったと評していますが、実は出題される英語そのものは随分と易しくなりました。難しくなった理由は英語で思考力と判断力と表現力が問われるようになったからです。
本質を見誤ってはいけません。
そして、つい最近まで「情報Ⅰ」の必修化に伴い「プログラミング力」が話題になっていましたが、それも下火になってきました。
情報Ⅰのサンプル問題が公開され、それが分析されるようになると、情報Ⅰで求められている力は、実は「べたなプログラミング力ではなかった」ことが分かってきたからです。
情報Ⅰで最も求められる力は、情報収集能力と情報分析力と情報処理力と情報判断力と情報表現力です。これらはもともと国語の現代文で求められてきたような力とかなり似ています。
共通テストの国語では、新たに実用文が出題されることになりました。サンプル問題は公開されましたが、過去問はありませんので、サンプル問題だけから対策を練るのはまだ危険です。
共通テストの国語で求められている力が、情報収集能力と情報分析力と情報処理力と情報判断力と情報表現力であるということをしっかりと理解できていて、それに対応できる力を磨いてきたかどうかで明暗が分かれることになります。
今や、インターネットやSNSやAIに生活の中で日常的にふれる時代になりましたので、情報収集能力と情報分析力と情報処理力と情報判断力と情報表現力は、生活していくうえで必要不可欠な能力となりました。
つまり、情報収集能力と情報分析力と情報処理力と情報判断力と情報表現力は、生きる力、生き抜く力、そのもだと言っても過言ではありません。
難関国公立大学を目指す受験生は、情報Ⅰが合否判定で採用されるかどうかにかかわらず、情報Ⅰでほぼ満点を取れる力がないと、新しい大学入試での勝者にはなれそうにありません。
最近公開された大手予備校の共通テストのボーダー得点率は、難関国立大学で軒並み引き上げられました。これは情報Ⅰの得点率が学力上位層で非常に高くなると見込んでいることの証左だと分析しています。
ここではハッキリとは書きたくはないのですが、難関国公立大学が推薦入試や総合型入試による入学者定員を増やしていることも、実はこの流れと連動していると判断しています。
・情報収集する力
・情報分析する力
・思考判断する力
・言語表現する力
巷の野暮な見方に反して、難関国公立大学の看板学部などに推薦型や総合型で合格できる受験生は、実は一般型でも余裕で合格できそうな受験生です。
難関国立大学の推薦型や総合型の入学者選抜は、実質定員割れしていたり難易度が事実上ないような一部の私立大学の推薦型や総合型の入学者選抜とは一線を画したもであることを理解しておくべきでしょう。
難関国公立大学の看板学部などの推薦型や総合型で求められる力もまた、
・情報収集する力
・情報分析する力
・思考判断する力
・言語表現する力
です。
それを証明する場が一般選抜ではなく推薦型選抜であり総合型選抜の場であるという違いしかないのです。
特に、入試面接や、入試小論文や、入試プレゼンテーションや、入試集団討論や、自己アピール文や、志望理由書や、研究計画書などでは、非常に高い言語表現力が求められます。
言い換えれば、言語表現力や言語的表現力や言語的表現能力は、総合学力とみなされているのではないでしょうか。
なぜなら、思考力が欠けても、分析力が欠けても、判断力が欠けても、論理力が欠けても、入試や就職試験や実社会で求められるような表現力は、十分に発揮できないからからです。
・情報収集する力
・情報分析する力
・思考判断する力
・言語表現する力
これらは、人気企業などへの就職活動でも求められますし、社会人となってからそれぞれの分野で活躍する際にも求められます。
特に、言語表現する力の差が、中学入試でも、高校入試でも、大学入試でも、就職試験でも、実社会でも、成果を大きく左右することになっていくでしょう。
*いつもご愛読していただき誠にありがとうございます。
*今回は50日連続投稿の記念記事として公開をします。
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