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【続・タイプⅡ:りぶらモデル】三矢式参加型まちづくりプロデュース術史(5)


1 りぶらモデルの新規性①

 三矢式参加型まちづくりプロデュース術(以下MMP)について前号までに、2004年から2006年までのりぶらプロジェクト(岡崎市図書館交流プラザの建築計画・設計および運営にわたる市民参加事業)は、過去に千葉で学習、習得してきた千葉でのまちづくり技術=MMPタイプⅠの組み合わせによって進められてきたことを説明した。
 もともと別の事業で展開してきた技術(A1とA2)を、一つのプロジェクトの中で連続して展開することにより、公共施設の計画段階から運営段階に渡りシームレスに市民参加を展開するという意味で、一つの技術的展開があり、これはこれで新規性がある。
 ただし、りぶらモデルはさらなる進化を遂げる。前号の後半で触れたように、2006年頃、愛知万博の関連で名古屋に出入りしていた沼田さんと出会い、岡崎のりぶらプロジェクトに参画してもらったことで、さらなるバージョンアップを図ることとなる。以下に解説する。

2 りぶらモデルの新規性②

 当時、沼田さんが横浜港開港150周年(開国博Y150、2009)に向けた市民参加プロジェクトとして、市民が各種活動の構想を立ち上げ、行動計画に落とし込み、実行グループを組成するとともに、その活動状況を事務局として情報集約および展開する仕組みを作る、といった一連の仕掛けをしていることを伺った。
 僕は、これをそのまま、りぶらを良い施設にするための市民の自主活動(後のりぶらサポーター活動)に参照することとし、沼田さんにファシリテーターとして前面に出ていただき、ワークショップの企画運営を進めた。
 2020年代の今、情報共有はSNSなどの手段が想定されるが、2006年頃はSNSが未発達だったこともあり、一般的にはメーリングリストで情報共有することが限界だった。合わせて、りぶらサポーター活動は、30名程の有志市民が6つ程度の分科会を運営しており、これを一つのメーリングリストで運営するとか、あるいは分科会ごとに個別のメーリングリストを運営することは不可能ではなかったが、事務局としても煩雑であり、それだけで市民プロジェクトの情報マネジメントをするのは過酷であった(実際に2006年時点ではそうしていた)。
 こうした限界を越えるべく、沼田氏が横浜で展開していた市民プロジェクト方式を、2007年からのりぶらサポーター活動に採用した。

3 市民プロジェクト方式の特徴

 市民プロジェクト方式の特徴は次の通りである。まず、前提として2006年に立ち上げた市民分科会方式の段階では、類似の関心を持つ市民同士が寄り合い、分科会を組織し、活動のテーマや構想、直近の半年、1年でできそうな活動を組み立て、やってみる、といった緩やかなものだ。これに対して、2007年に採用された市民プロジェクト方式は活動の輪郭や責任をはっきりさせる点に特徴がある。具体的には、まず年度当初に、市民が活動計画を立案し、目標や体制および予算を立案する。活動を支援する立場にある中間支援組織(りた)は、市民プロジェクトの活動支援予算を50万円程度は準備していたので、これを協議の上で調整をし、配分する。予算配分は当事者である市民同士(グループリーダーでの議論を軸に)で話し合って決める(注1)。活動状況に関する事務局と市民グループの情報共有は、メーリングリストでの情報共有は順次するものの、月一回のグループリーダー会議(注2)で共有した。グループリーダー会議の構成員は、市民リーダー、中間支援NPO(りた)、行政、の三者である。

4 タイプⅡ:りぶらモデル(2004-2008)

 以上のように、りぶらプロジェクトの進展の中で、①MMPモデルⅠの3技術を1プロジェクトの中で連続的に運用展開する、②横浜の市民プロジェクト方式を差し込み、市民が主体となって活動や予算を計画・運営・管理する、という技術革新が起きた。
 この技術革新の効果もあり、6つの分科会(2006)から10程度の市民プロジェクト(2007)が立ち上がり、より小さな単位で伸びやかな活動展開になった他、グループリーダー会議が設置されたことにより、市民自らがプロジェクト全体をマネジメントする仕組みの構築もできた。2008年に、市民サポーター事務局の役割を担ってきた中間支援組織(りた)から、事務局機能を市民側に移管し、「りぶらサポータークラブ」が設立できたのも、ここでの自立性と自律性の向上が重要だったと考えられる(注3)。
 今にしてみると、2006年までが、関係者全員が集う、ワークショップ(年6回)という場がメインエンジンになりがちで、それ以外の場は、市民の自主性に委ねる側面が強かったのに対し、2007年は違うことに気づく。2007年のりぶらサポーター活動では、ワークショップ以外のグループリーダー会議(月1回)の他、通年に渡る市民の自主的活動にメインエンジンを切り替えるシステム変更を可能としたのが革新的だ。
 以上のようにアップデートされた三矢式参加型まちづくりプロデュース術=りぶらモデルを「MMPタイプⅡ」と呼ぶ。

冒頭の写真は、UnsplashRaphel Joseが撮影したもの。

注1:活動予算を年度途中で柔軟に立案、執行する上では、行政から直接支給するのは困難であったため、岡崎市から、りぶらサポーター活動支援業務を受託しているNPO岡崎まち育てセンター・りたの受託費の中で、市民が計画執行できる予算を組み込んでおき、そこから、りたが市民グループに活動支援金を渡す(決算報告も、市民がりたに対してしてもらう)という資金的な流れとした。

注2:参考までに、当時、このグループリーダー会議は、SSCと名付けた。Supporter’s Support Conference、つまり、りぶらサポーター活動をサポート(支援)するための会議。

注3:この背景には、千葉時代の伴走支援の技術(A3)も効いている。

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