公園のコンディションを育む ー籠田公園と岡崎市公園協議会
1 使われ過ぎる公園
2021年から23年の3か年、僕は岡崎市公園協議会の委員長を拝命し、各種の議論に携わってきた。任期を終えるにあたって、以下振り返っておく。最も思い出深いのは「籠田公園が使われすぎる問題の解決」であった。
ことの発端は2022年5月のゴールデンウィーク。当時、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きをみせてきた時期であり、それまでコロナを理由に取り止めがされてきたイベントの再開はもちろん、従来、建物内で行われていたイベントも安全をみて公園で行いたい、といった社会的状況があった。あわせて、岡崎市中心部に立地し、10年近く取り組んできた中心市街地再生事業(QURUWA戦略ほか)の追い風も吹いている康生地区でイベントをやりたい、という様々な要因が重なり、この時期、連日イベントが開催され、それ以外の土日であっても相当数のイベントが行われるという状況にあった。
2 月2回のお休みルール
1点補足をしておく。三矢は籠田公園の計画段階から継続的に関わりを持ってきた。計画段階における市民と行政との対話の内容、さらに、実際に供用開始からの使われ方を定期的に観察し「籠田公園の価値は、日常利用(非イベント利用)にこそある」と考えていた。イベントはなくとも、そこはかとなく人々が滞在(噴水広場ではしゃぐ子どもたち、その周辺の休憩施設で見守るご家族の方々、さらに離れた休憩施設でその様子を観察している近隣高齢者の方々など)し、芝生広場でボール遊びをする人たち、フリスビーを投げて楽しむ人たち、木陰で談笑し、ギターを奏でる方々など50人くらいの方々が楽しむ様子があった。
こうした豊かな日常こそ、QURUWA戦略に示された「生活の質の向上」に資する公園の形であることを市役所の担当者らとも共有し「土日のうち、月に2回はイベントがない日を設ける」というルールを作り、それに基づいて公園が管理運営されてきた。故に、上記の「連日のイベント開催」は、「イベントがない日」を除く日の大半にイベントが開催された結果であった。
3 イベントでの音がうるさい
上記の状況を受け、近隣住民からの強いクレームが市役所に届いた。イベントに伴ういくつかの問題点が提起されていたが、最も対策が求められていたのが「音問題」である。イベントの伴う音が大きい、終日鳴っているなどがあり「お店の営業に支障がある」「子どもが寝ていられない、結果、親もノイローゼ気味である」という実害も指摘され、この問題解決を迅速に進める必要が発生した。
当時、既に予約が入っている団体さんにもイベント中止のお願いをし、当面のイベント利用申し込みをストップさせ、新しいルールが定まるまで「イベント中止」とした(この方向性を決める際に公園協議会が関わっている)。
4 賑わい至上主義を超えて
皮肉なものである。ややもすると、日本の中心市街地は「賑わい至上主義」であり、籠田公園の連日イベントが開催される様子は、ある角度から考えると「成功」である。しかし、その結果、(来園者の満足度は高まったかもしれないが)近隣住民の生活や商売が脅かされてしまった。
30年前の日本であったら、籠田公園は「イベント禁止」に近いルールを設定して終わっていたかもしれない。しかし当時、公園協議会での議論はもちろんのこと、「籠田公園周辺7町広域連合会」という自治会連合での議論でも、籠田公園問題は取り上げられ、その対策が進められた。
公園協議会の観点から整理すると、協議会の議論だけでは課題解決のルールデザインは難しいと判断し、タスクフォースを設置し、地元関係者と市担当者、あるいはイベント実施に詳しいメンバーにも入っていただき、別途検討が進められた。
地元主催の意見交換会に市職員が説明にあがり、そこでのやりとりも三矢へ迅速に共有された(白状しておくと、地元会議の時間で自分がいけた場面もあったが、委員長が直接出向いて発言することのリスクを勘案して参加を自粛した場面もあった)。愛知県や岡崎市の条例との整合性も検討し、市の担当課(公園緑地課)と三矢の情報交換も活発に行った。
5 新しいルールのデザイン
当時、NPO岡崎まち育てセンター・りたの天野さんが指摘していたことだが「例えば、愛知県の条例に基づいて、**デシベルよりも下であればいいか悪いかという問題ではない。地域の状況から考えれば、愛知県の条例以上に厳しい規制をかけることもありえるし、一方で地元の盆踊りをはじめ基準を超えて音を出す場面も許容されるべきである」。
つまり、明文化された文言のルールを作ることは重要だが、それだけにとどまらない柔軟な運営と共に「みんなで良い籠田公園を育んでいこう」という文化の形成をゴールとして設定した。
各種の協議と調整を経て、最終的にとりまとまったのは「指定管理者が公園利用の受付窓口だが、判断に迷うものがあれば地元関係者と市職員らで構成する調整会議に情報を入れる」「イベント初開催者に対しては、調整会議構成員から個別に説明し、必要に応じて地元(籠田公園周辺7町広域連合会・次世代の会)がサポートする」「イベント実施者は、地元の会合(籠田公園周辺7町広域連合会の例会)に出席し、説明を行う。許可を出すのは指定管理者だが、地元の会合で指摘事項があれば配慮してもらう」「その他、スピーカーの位置や向きをルール化、音量計で自己管理してもらう」といった仕組みである。大雑把にいうと、地元と行政が連携して、未然に問題を防ぐ仕組みを作った。
2022年5月の問題発生から始まり、ルールが整理されたのは年末だと記憶している。2023年の年明けから新しいルールのもと、イベント利用の受付が解禁され、2023年の春からのイベントシーズンを迎えることとなった。
6 卒業生の言葉
実数として、イベントの数は減った。手続きが煩雑化したことやルールが厳しくなったことも影響しているであろう。しかし僕としては現状の籠田公園のコンディションはとても良いと思っている。日常的にも程よい人の滞留があり、土日も以前ほどではないが、とはいえ、リニューアル前の籠田公園から比べれば十分な数のイベントが繰り広げられ、新ルール施行後1年を経て、これといったクレームは聞こえてこない。
以上のように、「賑わいすぎない」「日常的に豊かに利用されている」「土日や連休となれば中心市街地の核施設として存分に活用される」そんな籠田公園のコンディションが整えるために奮闘したのが、岡崎市公園協議会2022年度であった(正確には、協議会の下に籠田公園分科会がある)。
こうした籠田公園の育みに貢献した3年間を経て、公園協議会委員(委員長)を卒業できることを誇りに思っています。皆さんも是非、魅力溢れる籠田公園に遊びに来てください。
【参考文献】
公園協議会
https://www.city.okazaki.lg.jp/1100/1184/1170/p034153.html
籠田公園利用ガイドブック
https://www.city.okazaki.lg.jp/1100/1184/1170/p024385_d/fil/kagodaguide.pdf
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