QURUWA戦略-改訂2024に寄せて
0 はじめに
2024年2月7日に、乙川リバーフロント地区公民連携まちづくり基本計画、通称QURUWA戦略の改訂案が開示された(註1)。3月7日までパブリックコメントが求められている。QURUWA戦略が2018年に策定され、2019年に改訂された。あれから5年が経ち、改めて基本計画を改訂するようだ。
筆者は、過去にQURUWA戦略をまちづくりの中間支援組織、岡崎まち育てセンター・りたの一員として微力ながらお手伝いしてきた身である(業務として携わっていたのは数年前のことだ)。そうした立場と同時に、一市民として岡崎の中心部の行末には関心を持っており、改めて今回の基本計画に目を通した。以下、パブコメに向けて作成した文言であるが、国内の地方都市で再生に携わっている方々にも参考情報になるのではと考え、備忘録的に公開してみたい(一部、一般の読者向けに加筆修正を行った)。
1 成果、評価の記述
改訂にあたり、これまでの5年間の成果や効果を明示することが重要だと思うが、そのような記述が見受けられないのが気がかりである。私なりに生活者目線でみると、Quruwa戦略の前と今とでは、中心部の様相は、かなり状況が変化したと思う。以下、特徴的な2点を触れておく。
①籠田公園周辺で開業した店舗が多くあり(聞くところによると近年5カ年においては毎年10軒超の出店がある)、例えば戦略策定時に課題となっていた事業所数の減少や従業員数の減少に対して一定程度改善したと感じている。こうした量的な評価に加えて、開業している店舗の種類の豊富さ、事業所の質の高さについても成果が上がっていると思うので、そうした点についても言及があると良い。
②岡崎の中心部・康生地区の特徴は、全国の都市再生、エリアマネジメントと比較して『自治再生、新しい形の自治創成』に展開している点にあると思う。具体的には、Quruwa7町連合、および次世代の会の存在に象徴される。このことは、2023グッドデザイン金賞を受賞した際にも確認された(註2)。改定案の中で、この文言は見あたるが、その存在の価値、さらに踏み込んで言えば、日本の地方都市再生をリードする、先駆的な成果が挙がっていることへの言及が見られないのが残念だ。
2 行政の主体的関与
岡崎の中心部を巡るプロジェクトであることもあり、市の行政課題の最前線を受け止めているのがQuruwaエリアであることが滲み出ている印象を受けた。具体的には、4p、5pにあるように、ウォーカブル、ゼロカーボン、産業労働、といった新しい社会課題が新規のテーマとして掲げられており、時代の先端課題に取り組むエリアとしての色合いがよく出ている。こうした、新しい行政課題が設定され、そこに新しい部署ができ、地域や事業者と連携して都市再生を進めることは、今後とも積極的に展開してほしい。
一方で、Quruwa戦略の根幹をなすテーマの一つに公民連携がある。国内事例を見るに、公民連携、指定管理者制度やPFIの良し悪しは様々であり、ややもすると公民連携の名のもとに、民間事業者丸投げとなっているような印象を受ける事例もあるため、そうなるリスクがあることには十分に注意を払って欲しい。具体的には、状況や担い手によっては民間主体でバランスよく公共空間の管理や活用ができていることもあるが、収益性が最優先されて公益の最大化ができているのか怪しい事例も見受けられる。行政の関与やコミットメントを一定程度維持し、本当にパブリックマインドが維持され、公共の利益を担保できているのかを確認することを行政の役割として期待したい。合わせて、こうした関与を前提にしておかないと、行政内部に公共空間の計画、管理、活用のノウハウが蓄積されないリスクがあることも付記しておく。
3 グローバルとローカルのバランス
Qurruwa戦略の中には、観光産業都市、という文言がある。住民の暮らしを重視し、生活価値の向上や創造を重視し、そのことが翻って市外や県外からの観光にも資する観光資源となると言う戦略の立て方には賛成である。 観光という視点で都市の発展を考える際、外からの視点、できれば国内外からの広い視点からの助言を受けながら進めていくことが重要と思う。幸にして、Quruwa戦略の場合、清水氏、西村氏、藤村氏、泉氏など錚々たる日本の都市プロデューサーらの助言を得てきたことが今日の成果を下支えしてきたと思う。 今後更に新しい都市課題に取り組むにあたり、助言者の追加や変更ということも考えられるが、少なくとも、広い視点で岡崎の都市戦略に助言をしてくれる専門家の配置は引き続き重要だと考える。
その一方で、先に触れたように、岡崎の都市再生の特徴は、自治再生にある。本戦略に記載があるように、生活価値の創造を土台に戦略推進を図るべきである。上記に示したグローバルで広い視点と、それと同様またはそれ以上の位置付けで、住民の思いや活動、生活に寄り添ったローカルな視点で再生戦略を組み立てられる専門家、言い換えるとボトムアップ型まちづくりの専門家の配置も重視してほしい。
註1:パブコメ終了後はリンク切れになっているかもしれないが、その場合はご容赦いただきたい。公開時のアドレスは以下の通り。
註2:2023グッドデザイン金賞 QURUWA戦略。詳細は下記HPを参照のこと。
※冒頭の写真は、UnsplashのMaarten van den Heuvelが撮影したもの
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