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文ストの推しなので『江戸川乱歩傑作選』を読んでみた

 あー、面白かった。堪能した堪能した。

 めっちゃ不純な動機(タイトル参照)で読み始めたはずなのに、気付けばのめり込んでいた。『江戸川乱歩傑作選』。

新潮文庫/1960

 ビッグネームすぎて、小説家というより「歴史上の偉人」として認識していた江戸川乱歩。そのせいでなかなか手を付けられずにいたけど、いざ読んでみたら古臭さも難しさもなく、本当に面白かった。さっそく図書館で他の作品(『魔術師』)も借りてきちゃったくらい。

 というわけで、カンタンなレビューでも書いてみようかと。
 今回初めて知った乱歩の人となりや裏話、タイトルにある『文スト』って何ぞや、みたいな情報も自分用のメモも兼ねて書いておくので、それを読んで乱歩や『文スト』の乱歩さん(ややこしい笑)に興味をもってくれる人が一人でもいたらわたしは喜ぶ。

 そしてゆくゆくは乱歩さんのグッズもっと増えろ(本音)。



江戸川乱歩とは

出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)
  • 本名:平井太郎

  • 生没年:1894年10月21日 - 1965年7月28日(70歳)

  • 早稲田大学政治経済学部卒

  • 貿易会社勤務、古本屋、新聞記者などを経て、1923年に『二銭銅貨』でデビュー(29歳)

  • 代表作は『D坂の殺人事件』、『陰獣』、児童向けの『怪人二十面相』、『少年探偵団』など。名探偵・明智小五郎の生みの親としても有名

  • 1947年に探偵作家クラブ(現在の日本推理作家協会)、1954年に江戸川乱歩賞を設立。後進の育成に尽力する

 と、教科書的な情報はこんなところ。エドガー・アラン・ポーの大ファンでペンネームもそれをもじったことは知ってたけど、想像以上に本名普通だったわ。これは派手なペンネームを付けたくなるかもしれない(本名が良い・悪いの話じゃなく、小説家として印象に残りやすいって意味で)。

 ちなみに『江戸川乱歩傑作選』の解説によると、中学のときにお父さんが破産したり、妻子ある身で失業したり、なかなか苦労が多かったみたい。
 エログロホラー何でも書ける推理作家で探偵小説マニア、の側面だけを見て、勝手に “破天荒でトリッキーな奇才” だと思い込んでた自分を反省した。知ることってやっぱり大事。超大事。

文ストとは

 いや本当、知らない人からしたら「何でこいつはいきなり乱歩なんて読みだしたんだ」って感じですよね。それをこの項で(たぶん)サクッと説明。

 まず『文スト』は、漫画『文豪ストレイドッグス』の略称。
 原作・朝霧カフカ、作画・春河35。2013年1月から月刊『ヤングエース』で連載中。

 ↑ の公式サイトにもある通り、カンタンに言うと「文豪の名を冠するキャラクターたちが、現代横浜を舞台に異能力バトルを繰り広げる」話。

 それこそ太宰治とか、芥川龍之介とか。国語の教科書に出てくるような超有名人(まさに ”文豪”)と同じ名前を持つキャラクターが次々登場しては、その作品にちなんだ異能力を武器に展開するバトルや駆け引きが見どころ。

 でもってわたしの推しが、今回の主役・江戸川乱歩――をモデルにした、江戸川乱歩というキャラクター。やっぱりややこしい笑。
 普段この人を散々好き好き言ってる割に、そういえば本家・江戸川乱歩の作品は読んだことなかったなあ。とふと思ったのが、『江戸川乱歩傑作選』を手に取ったきっかけで、この記事のタイトル(文ストの推しなので江戸川乱歩傑作選を読んでみた)の意味するところ。
 分かりにくいな笑。

 ああ、そうそう。噂の『文スト』、女性ファンが多いせいで「キャラ萌えが売りの漫画」と思われがちみたいだけど、個人的に本質のところは『HUNTER×HUNTER』に近いと思ってたりする。原作者が天才で、鬱展開あり、容赦なく人が死んでいく頭脳派バトル漫画。お好きな方はぜひご一読を。

『江戸川乱歩傑作選』全9編ひとことレビュー

 やっと本題笑。
 といっても長々書くと疲れちゃうので(正直モード)、ここは見出し通りひとことずつ、メモ程度の感想を残して終わろうかと。

1.二銭銅貨

 「あの泥棒が羨ましい」という書き出しにまず引き込まれる。日本人ならではの暗号もの。ググってみたら1920年の1円 ≓ 今の700円らしいので、5万円 ≓ 3500万円くらいになりそう。そりゃ盗まれるわ。

2.二癈人

 二十年のときを経て、自分がやった(と信じていた)殺人事件の真相が明かされる。こんな静かな残酷あるか。そして”癈”が予測変換で出てこない("廃"の旧字)。

3.D坂の殺人事件

 「名前だけは知ってる」状態、卒業できてよかった~~。明智小五郎シリーズの密室もの。解説に「開放的な日本家屋では密室殺人など書けない、という偏見を打破するために書いた作品」ってあって面白かった。乱歩負けず嫌いじゃん。

4.心理試験

 明智小五郎シリーズの倒叙もの①。賢い犯人をそれ以上に賢い探偵がロジカルに追い詰めていく構図がスマートで少しサディスティック。9編の中で一番好き。

5.赤い部屋

 法では捌けない完全犯罪の方法が次から次へと語られていくだけ。たぶん乱歩が自分の思いついたアイディアを聞いてほしくてキャラの口を拝借したんじゃないかと。かわいいかよ。

6.屋根裏の散歩者

 明智小五郎シリーズの倒叙もの②。「心理試験」同様、犯人が殺人に至るまでの心理がしっかり描かれていて好き。明智が他殺を疑うきっかけになった目覚まし時計のくだりも良い。

7.人間椅子

 これだけタイトル通りの話もなかなかない。普通に考えて気付かないわけないだろと斜に構えて読んでたら最後、見事にどんでん返しをくらってしまった。やられたあ。

8.鏡地獄

 強いて挙げるならこれだけは外れだったかも。鏡を偏愛する青年が狂い死ぬまでの顛末。解説の方は絶賛してたので、好みが分かれる作品なのかも。

9.芋虫

 評判通りの衝撃作。視覚と触覚以外の全ての感覚と四肢を失った元少尉とその妻のエログロ攻防戦。鬱要素しかない。でも読んじゃう。なんで???

おわりに

 カンタンなレビューのつもりが、まあまあ長くなっちゃった。ここまで読んでくださった方がもしいたら、今すぐ五体投地してお礼を言わなきゃいけないレベル。本当にありがとうございます。

 よく考えたら自己紹介もしていなかったけど、わざわざ記事を書いてまで自分を紹介するよりは、本や本屋巡り、旅について語りたいので、また唐突にこんな感じの記事をアップする気がします。

 ではまた、ご縁があれば。

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