四国ローカル列車ツアー2018 後編 ~ 華のおんなソロ旅
2018年に参加した、四国のローカル列車を乗り継ぐ2泊3日のツアー記録の後編です。
2日目、高知のひろめ広場での昼食後、向かったのはすぐ近くの高知城。この城の天守閣は江戸時代から現存する12の天守の一つであり、本丸のすべての建造物が残っているのはここだけとのこと。60分の自由時間の中でしっかり見て回ることにした。
国内旅行の前には、できるだけ関連するドラマを観たり、本を読んだりしていく。今回は、大河「功名が辻」(2006年・NHK)と「龍馬伝」(2010年・NHK)をザっと観てきた。初代藩主、山内一豊は、昔は「やまのうち」と呼ばれていたが、今は「やまうち」で統一されているようだ。妻の像を見ると、「あら、千代さんだわ」とつい大河の仲間由紀恵の顔を思い浮かべてしまう。ドラマ放映時はこの界隈も盛り上がったのでしょうね。司馬遼太郎の原作だが、彼の作風を考えるとなぜこのテーマを取り上げたのかが不思議である。「内助の功」なんて現代の女性からみるとゲゲゲ・・のかぎりなんだが。甘めの「利家とまつ」(2002年・NHK)とイメージが重なり、歴史の勉強にはなったものの個人的にはあまり好きな大河ではない。
この夜はいよいよ四万十川の遊覧船乗船である。夕刻に、ツアーでチャーターした屋形船に乗り込み、有名な沈下橋(増水時に川に沈む設計の欄干のない橋)を鑑賞しながらお弁当の夕食。川の上が真っ暗になり、目を凝らすと山肌にちらほらと飛び交う蛍の光が見えた。皆、しばし息をひそめて言葉もなく、幻想的な風景に酔った。
下船してバスで向かったのは、JR宇和島駅の近くの宿である。宇和島も城下町で有名だが、ここでの観光は予定されていない。 翌日、3日目は早起きして出発時刻まで周囲を散策することに。お目当ては宇和島城である。現存12か所のひとつの天守のあるところまでは階段が結構きつい。途中工事をしている箇所を横目にして懸命に上ったが、開城時間前で天守に登ることはできなかった。宇和島は歴史的著名人との縁も深く、大津事件の大審院長であった児島惟謙(こじまいけん)、民法の父と称えられた大法学者、穂積陳重(ほづみのぶしげ)の出身地である。大村益次郎、高野長英の旧居跡もあり、いずれまたゆっくり訪れてみたい地である。
宇和島をバスで出立、向かったのは大須市。ここは「伊予の小京都」とも礼賛される風情のある城下町で、平成16年に天守が再建されたという大須城、朝ドラ「おはなはん」(1966年・NHK)のロケが行われた「おはなはん通り」など見どころも多い。40分間という自由散策で選んだのは「臥龍山荘」(がりゅうさんそう)という名勝。歴代藩主が愛でたという借景庭園に心洗われる思いであった。
さて、いよいよ、本ツアーのメインイベント、観光列車「伊予灘ものがたり」(※初代「こがね」。2022年から2代目車両になったとのこと)への乗車である(ローカル線乗車④) 。八幡浜から松山まで何種類か行程があるのだが、今回は伊予大須駅から松山駅まで2時間20分かけて乗車する双海(ふたみ)編に乗る。今回のキャッチ画像は、車内販売で買ったマグネット。自分用のお土産はマグネットが多く、職場のロッカーにペタペタ貼って眺めては、ニマニマと思い出に浸っている。ツアーの貸切運転でゆったりとランチを楽しみ、過ごすことができた。沿線では地元の方々が旗を振ったり歓待してくれていたが、毎日のおもてなしも楽ではなかろうと思う。
午後に松山入りし、自由時間になった。大好きな道後温泉までは電車で30分ほどで行くことができ、ツアー客の中には出かけた人もいるようだが、忙しいのもどうかと思い、今回は松山城と近辺をうろうろとすることにした。司馬遼太郎の作にちなんだ「坂の上の雲ミュージアム」の喫茶が好きなのだが、あいにく休館日。陸軍軍人で著名な秋山好古(よしふる)、海軍の名参謀であった秋山真之(さねゆき)兄弟生誕地を再訪し、休館だったので外から銅像を眺める。10年ほど前に訪れた時には、「『坂の上の雲』が好きなんです」と言うと、館内の方が熱心にエピソードを教えてくださった。ちなみに、3年がかりで放映されたドラマも素晴らしいものである(2009~2011年・NHK )。
こうして2泊3日のツアーをしっかり楽しむことができた。ツアー参加も慣れてくると、単なる周遊型ではなく、何かテーマや特別の趣向のある旅が面白いと思うようになる。決して旅行会社の回し者ではないのだが、今もあるのなら、お奨めできる好企画である。