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ハラスメントや人事権の濫用は認められないため、従業員の各種請求が否定された事例(平成28年8月9日大阪地裁)

概要

被告の支店長の地位にあった原告が、役職定年制度規程に基づき専任職として処遇されることとなったが、原告を専任職として処遇することは人事権の濫用に当たるとして、支店長の地位にあることの確認等を求めた。

結論

棄却

判旨

職位は,当該会社における制度設計によっては,当該職位に基づいて付与される賃金等の待遇を表す地位と捉えることも可能であるところ,会社では,役席によって役割給の金額が定まるとされていること,支店長の役割給が22万500円であるのに対し,担当副部長の役割給が14万2500円であることが認められ,かかる制度設計からすれば,職位が支店長であるのかそれとも担当副部長であるのかによって,支給を受ける役割給の金額が異なることとなり,そして,従業員が,現在も会社に在籍しており,今後も毎月継続的に会社から役割給を含む賃金の支払を受ける地位にあることからすれば,従業員が支店長としての役割給を受ける地位にあるか否かを判断することが紛争の抜本的解決にも資するということができるから,従業員の請求は,確認の利益がある。
従業員については,会社もその渉外力・交渉力については高い評価をしており,実際,本件処遇後も,良好な営業成績を上げていることに照らしても,従業員が渉外力・交渉力を要する業務については能力を有しているといえるものの,支店長として,組織運営という業務に従事するに足りるかという観点からみた場合には,会社が求める水準には達していないと評価したことが不当であったということはできず,本件処遇が人事権の濫用に当たるということはできない。
本件処遇が人事権の濫用に当たると認めることはできないから,本件処遇が不法行為に当たるということもできず,また,従業員が勤務経験がない拠点内の支店に配属されたことをもって,不平等な取扱いを受けたということはできず,さらに,企業が目標を設定する際に,容易に達成可能な目標を達成するのではなく,達成が困難な目標を設定した上で,職員に奮起を求めることとすること自体には問題がなく,そして,企業が従業員個人の目標を設定すること自体にも問題はないから,融資獲得目標額が会社が定めたものであり,その額が高額であったことをもって,ハラスメントであるということはできないこと等から,本件処遇が不法行為に当たること,あるいは従業員が本件処遇後にハラスメントを受けたことを認めるに足りる証拠もない。

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