解雇無効で未払い賃金請求が認められた事例(平成28年5月17日大阪地裁)
概要
被告会社の従業員であった原告が解雇されたが、同解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位確認を求めるとともに、解雇後の賃金等の支払いを求めた。
結論
一部認容、一部棄却
判旨
元従業員の言動には問題となるものが複数(不倫相手のシフト変更,電子メールの私的利用等,個人メールアドレスへの送信,パワハラ,ストーカー行為)認められるところ,本件解雇の有効性の判断においては,各行為について個別の事象として捉えるのではなく,総合的に考慮すべきものではあるが,元従業員の言動の内容や生じた結果等にかんがみれば,解雇事由として重大な事由であるとまではいうことができず,会社が主張するその他の事情を総合考慮しても,元従業員を解雇するのは重きに過ぎるといわざるを得ないから,本件解雇時点における評価としては,本件解雇は社会的相当性を欠くものとして無効である。
元従業員は本件解雇が無効であるとした上で,平成25年度賞与として60万5138円の支給を受けるべきであり、平成26年度以降も同額の支給を受けるべきである旨主張するが,会社の賃金規程においては,賞与は会社業績・個人評価等に応じて業績賞与を支給することがある旨定められているところ,かかる賃金規程の定めにかんがみれば,賞与を支給するか否か自体が確定しておらず,また,その点を措くとしても,会社の業績を踏まえた上で,労働者個人の人事考課を経て初めて具体的権利として生ずるものと解するのが相当であるから,本件解雇が無効であるとしても,元従業員が,会社に対し,賞与の支給を求めることはできない。
元従業員は,解雇期間中に他社で勤務し,中間収入を得ているから,その収入があったのと同時期の解雇期間中の賃金のうち,同時期の平均賃金の6割を超える部分について控除する必要があるところ,元従業員の他社における収入には毎月通勤費として支給を受けているものがあり,定額であれば毎月同額となり,実費負担として通勤日数に応じて支給されるのであれば,各月の支給額と出勤日数との間に有意な関係があるはずであるが,元従業員が支給を受けた金額に照らすと,定額ではなく,また勤務日数にも比例していないことからすれば,元従業員が通勤費として支給を受けているものが実費負担とは認められず,ほかに通勤費名目の支給を控除すべき事情を認めるに足りる証拠もないから,中間収入の算定においては控除しない。