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【控訴審】職場環境配慮義務違反とした損害賠償請求が否定された事例(令和2年11月25日高松高裁)

概要

被控訴人(被告)が設置、運営する国立大学の薬学部の准教授である控訴人(原告)が、同薬学部の教授であり、同薬学部長であった被控訴人補助参加人Aからパワハラ行為ないし嫌がらせ行為を受けたとし、また、被控訴人には職場環境配慮義務違反があるとして、Aの使用者である被控訴人に対し、国家賠償法1条1項及び安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求として、損害合計330万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審は控訴人の請求を棄却したところ、これを不服とする控訴人が控訴した。

結論

変更

要旨

学生の募集に関する准教授の提案について,前年度は准教授の研究グループに配属された学生が0名であり,全体として准教授の研究グループに配属されている学生の数がAの研究グループのそれを相当に下回り大きな差が生じている状態になっていたことによれば,平成27年度の募集人数については,そのような状態を踏まえ,研究室の運営を行うAにおいても,准教授の意見を聴取してさらに話し合うことが適切であったと考えられるところ,Aの言動はAの研究グループの教員の人数が多いことやAが教授であることから,Aの研究グループが准教授の研究グループより多くの学生を受け入れるのが常識であるとの考えの下,准教授の意見を非常識であるとして非難し,また准教授に対して,Aの研究室から出て行けばよいとの旨や,Aの語調が厳しく,また声も大きかったと認められることや,Aが准教授と同じ研究室に所属する教授として,准教授の学内あるいは学外の教授職への就任において,事実上一定の影響力を有しており,相対的に優位な立場にあったといえることを併せ考えれば,職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて人格と尊厳を侵害する言動であるといえ,違法な行為に当たるというべきであるから,大学法人はAの行為に関して,准教授に対して国家賠償法1条1項による責任を負う。
大学法人は,Aの不適切な言動等に関し,講座責任者としての管理監督責任が問われるべきである等として,Aにつき職員就業規則43条に基づく厳重注意処分とし,同日,これが学長からAに伝達されたことを准教授にもメールで連絡しているのであるから,大学法人において事実調査等に一定の時間を要したことや准教授への進捗状況についての開示がなかったからといって,大学法人の対応に職場環境配慮義務違反があるとまではいえず,また准教授は大学法人に対し,准教授とAの部屋を離すよう要望したが,大学法人は両名の部屋が隣に配置されている状況を放置しており,職場環境配慮義務に違反すると主張するが,准教授とAは同一の研究室に所属する者であり,Aの行為のうち違法性が認められるものは1回に限られ,その後パワハラ等と認めるに足りる行為はないことによれば,大学法人において部屋を離す義務があるとは認め難いし,大学法人が提供できる部屋や研究設備等には制約があると考えられ,大学法人が両名の部屋を離すことが容易であるのにこれをしないとも認められないこと等から,大学法人に職場環境配慮義務違反があるとはいえない。

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