見出し画像

【控訴審】ハラスメントを理由に受けた大学教員の減給処分が重く、請求の一部が取り消しされた例(平成27年3月25高松高裁)

概要

被控訴人(被告)大学の教授であった控訴人(原告)が、減給の懲戒処分を受けたところ、その過程で、控訴人の研究室に所属する学生であった被控訴人(被告)Aが、控訴人からハラスメントを受けた旨の虚偽の内容を記載した研究室変更願を提出するなどし、学科長であった被控訴人(被告)Bが、人事審査委員会に控訴人の処分を要請するなどし、人事審査委員会委員長であった被控訴人(被告)Cが、控訴人にハラスメントを行い、杜撰な調査、審議により、人事調査委員会として、控訴人の懲戒処分の可能性があると報告するなどし、被控訴人大学の学長である被控訴人(被告)Dが、人事委員会の委員長代理を指名せず放置し、懲戒処分に至らせたことが不法行為を構成するとして、各被控訴人に対し、慰謝料等の支払いを求め、原審が請求を棄却した事案の控訴審。

結論

棄却

判旨

学生に対しその英語能力では英語関係の就職は難しい旨の発言をし,大学院への進学を勧めたこと等,教授の言動は,学生Aに対する進路相談の一環としてされたものであり,ハラスメントというには疑義が残るもので大学による懲戒処分は無効であり、仮にハラスメントに該当するとしても,Aの尊厳を損なうまでに態様,程度が重大なものであるということはできず,量定上,今後も同様の行為を繰り返す可能性があることを考慮することも相当とはいえないことからすると,大学が減給の懲戒処分をしたことは,重きに失するものと言わざるを得ず,懲戒処分の量定の相当性を欠き無効であり,大学は,量定に当たって考慮することが相当とはいえない事情を考慮し,判断を誤ったものであって,本件懲戒処分をしたことについて,不法行為責任を免れない。
学生Aによる変更願の記載内容は,事実経過を記載した部分については認定事実と特段齟齬するものではなく,主観的認識を記載した部分については,基本的には上記事実経過に基づいて自身の感じた苦痛を記載したものということができ,悪意により虚偽の内容を記載したものであるということはできず,学生Aの変更願提出が不法行為を構成するとまでは認められない。
学科長Bが控訴人を陥れる目的で処分の要請をしたということはできず,教授を非難する記載が含まれているが,学科長Bに関する部分にも,同人を非難する記載が含まれており,その一方をもって,悪意を基礎付けることはできず,学科長Bの行為が,教授に対する不法行為を構成するとは認められない。

いいなと思ったら応援しよう!