マタハラによる鬱病が業務災害によることから退職扱いは許されない争った事例②(平成30年12月17日名古屋高裁)
概要
被告(歯科クリニック)に雇用され、本件クリニックで歯科技工士として稼働してい原告が、産休及び育休の取得に関して被告らから嫌がらせ等を受けたことによって本件精神疾患となって休業したものであるから、本件退職扱いは労働基準法19条1項に違反して無効であるなどと主張して、1審被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、労働契約に基づく未払賃金等の支払い等を求め、1審が地位確認及び未払賃金等請求を一部認容し、双方が控訴をした。
結論
変更
判旨
元従業員の請求は,院長に対し,労働契約上の地位の確認,未払賃金329万4140円等及び平成30年8月から本判決確定の日まで毎月末日限り月額21万8000円等の各支払を求め,院長及び副院長に対し,連帯して慰謝料50万円等の損害賠償等の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。
元従業員は,子が満1歳に達する日の前日までは育休を取得していたものと考えられるから,当該期間については,賃金支払請求権は発生しない(就業規則より)から,元従業員は,院長に対し,平成27年3月18日から同年6月5日までの期間,平成28年6月20日から平成29年6月27日までの期間及び平成30年7月11日以降について,労働契約に基づく賃金支払請求権を有しているというべきであるところ,平成27年2月11日から同年3月10日までないし平成29年6月11日から同年6月27日までの合計326万8354円と,平成30年7月11日以降について,毎月末日限り,月額21万8000円の割合による金員の支払を請求することができる。
院長による本件退職扱いは違法であると認められるが,本件退職扱いが無効とされることによって,元従業員の労働契約上の地位は失われず,本件休職以降の未払賃金の全額について請求が認められることなどに照らすと,本件退職扱いによって元従業員の受けた損害は回復されたというべきであり,元従業員になお償うことのできない精神的苦痛が生じたものとは認められず,元従業員の慰謝料請求を認めることはできない。