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【第1審】業務の過重と上司の言動が医師の自殺と因果関係が認められ損害賠償が認められた例(平成26年5月26日鳥取地裁米子支部)
概要
原告らが、被告らに対し、被告病院組合の運営する病院に医師として勤務していた原告らの子が、同病院における過重労働や上司らのパワハラにより、世界保健機構の国際疾病分類第10回修正「F32うつ病エピソード」を発症し、自殺に至ったとして、債務不履行又は不法行為に基づき、原告一人につき死亡慰謝料等の損害賠償の支払を求めた。
結論
一部認容、一部棄却
判旨
亡医師の業務の過重さのほか,上司らの言動から相当程度高い精神的負担を感じていたことが認められ,さらに,遅くとも平成19年11月中旬以降に上司らによる明らかな不法行為があったこと等からすれば,過重業務や不法行為等が亡医師に与えた心理的負荷は非常に大きく,同人と職種,職場における立場,経験等の点で同等の者にとっても,社会通念上客観的にみて本件疾病を発症させる程度に過重であったと評価せざるを得ないから,これらの行為と本件疾病との間には優に相当因果関係が認められ,本件疾病のエピソードとして自殺観念や行為が挙げられ,亡医師が本件疾病と無関係に本件自殺に至ったことを認めるに足りないことからすれば,本件自殺は本件疾病の精神障害の症状として発現したと認めるのが相当であり,上記各行為と本件自殺との間の相当因果関係も認めることができる。
組合及び上司の行為はいずれも純粋なる私的社会経済作用として,公権力の行使に当たるとはいえないものと解されるから,本件においては国家賠償法の適用がなく、組合には適正管理義務違反による債務不履行責任が認められ,組合の同義務違反には過失が認められ,また,組合は上司らの使用者であるから,適正管理義務違反行為に係る不法行為責任及び上司らの不法行為に係る使用者責任もまた認められる。
上司らは,亡医師の業務の補助をし,また,その軽減を図るための一定の措置をしているものの,実際上軽減の効果はなく,亡医師の業務が過重と評価される程度であり,かつ,平成19年11月下旬にはそのような状況を認識しながら,あたかも追い打ちをかけるかのように不法行為を重ねて行うなどしているのであるから,上司らには組合と同様の不法行為責任が認められ、亡医師は,本件疾病発症の1か月以上前である平成19年10月23日の時点で本件疾病発症の可能性を認識し,また,医師としての研修を経たことにより一般人に比して本件疾患やそれに対する対応につき知識を得ていたと考えられるが,本件疾患発症までに医師への受診等によりその発症可能性を軽減する行動を自らとっていないこと等を考慮すると,損害の公平な分担の観点からして,組合及び上司らのみに本件損害の全てを負担させるのは相当でなく,過失相殺の規定を類推適用し,損害額を2割減じるのが相当である。