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【第1審】他の教授へのハラスメントに対する停職・解雇(令和1年5月31日岡山地裁)

概要

国立大学法人である被告に教授として採用され、被告の薬学部長ないし副薬学部長等を務めていた原告ABが、被告から
(1)他の准教授等に対してハラスメントを行ったこと等を理由として、原告A、原告Bそれぞれ停職の懲戒処分を受け、
(2)教授としての必要な適性を欠くことを理由として、それぞれ普通解雇されたことに関し、
(1)の処分は無効、違法であるとしてその確認と未払賃金等の支払をそれぞれ請求し、
(2)の処分は無効、違法であるとして地位確認と未払賃金等の支払をそれぞれ請求した。

結論

棄却

要旨

Bに対する停職処分に関する懲戒事由は,計10件にも及ぶハラスメント行為であり,そのほとんどは,旧執行部である教授1や教授2,Bの意に従った対応をしなかった准教授3や准教授4らを相手方とするものであり,一部の懲戒事由については,薬学系教員らからのハラスメント行為の相手方(上記教授や准教授ら)に対する評価や信用を低下させる重大な結果をもたらすものである上,個々の表現内容も相手方を強い言葉で断定的に誹謗,侮蔑等するものがほとんどであり,態様としても悪質であって,メールの受信等をした他の職員への悪影響ないし萎縮的効果も看過できず,Bのこれらの行為は,重大なものというほかならず,Bが当時副研究科長ないし副学部長という,本来ならばハラスメントの防止等を図るべき地位にあったことも考慮すれば,Bには過去に非違行為はないことを考慮しても,停職8か月間という停職処分の量定をもって,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当性を欠くものとは認められず,その権利を濫用したものとはいえない。
Aに対する停職処分に関する処分事由も,Bのハラスメント行為とほぼ同様であり,AはBの一部行為について監督責任を負うところ,Bに対する処分事由が重大なものであることからすれば,監督責任も相応に重いものといわざるを得ず,Aが,当時,学部長,薬学系長及び副研究科長という,本来ならばハラスメントの防止等を図るべき地位にあったことも考慮すれば,Aには過去に非違行為がないこと等を考慮しても,停職8か月間という停職処分の量定をもって,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当性を欠くものとは認められず,その権利を濫用したものとはいえない。
大学は,多数人によって構成される大学組織であるところ,元教授ABは,組織上,准教授や助教らの上司の地位にある大学における主要な構成員であり,その職務の遂行において,大学との間の信頼関係を維持することが要請されるというべきであるところ,元教授らの各告訴状の提出,報道関係者への情報提供等,それらのほとんどは,元教授らによるハラスメント行為についての調査に対抗し,これを妨げることを目的として行われたものといわざるを得ず,元教授らと大学との間の信頼関係の毀損の程度は著しく,回復困難なものであるというべきであるから,元教授らについて,就業規則所定の解雇事由(大学の教授として「必要な適性を欠く場合」)に当たると認められ,本件各解雇は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当性を欠くものとは認められず,その権利を濫用したものとはいえないというべきであるから,本件各解雇が無効であるとは認められず,労働契約上の地位を有することの確認を求める旨の元教授らの請求はいずれも理由がない。そのため各停職処分に係る停職期間中及び本件各解雇後の未払賃金等の支払を求める旨の元教授らの請求,及び,本件各解雇に係る不法行為に基づく損害賠償金の請求は,いずれも理由がない。

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