
Photo by
yusukewatanabe_
上司のセクハラによるうつ病発症に業務起因性があるとされた事例(令和2年3月13日札幌地裁)
概要
原告が、勤務先の会社でのセクハラ等により精神障害(うつ病)を発病したとして、札幌東労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付の各支給を請求したところ、同署長から、原告の上記精神障害の発病は業務に起因するものではないとして、これらの給付を支給しない旨の各処分を受けたため、原告の上記精神障害の発病は業務に起因するものであり、本件各処分は違法であると主張して、その取消しを求めた。
結論
認容
要旨
勤務先の会社の北海道営業部長Aによる一連の行為は,「胸や腰等への身体接触を含むセクハラであって,行為は継続していないが,会社に相談しても適切な対応がなく,改善されなかった又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した場合」に該当するのであって,Aによるセクハラそれ自体の心理的負荷の強度は「強」であって,内部通報に関与したうわさがあることを理由として嘱託社員への登用につき保留された事実関係についての心理的負荷の強度は「中」であるから,その余の点について判断するまでもなく,認定基準に照らし,本件における業務の心理的負荷の強度は「強」というべきであるから,労働者の精神障害の発病前おおむね6か月の間に,業務による強い心理的負荷があったと認められ,また労働者が業務以外の心理的負荷及び個体側要因によりうつ病を発病したとは認められないから,本件における労働者のうつ病の発病は,認定基準の要件のいずれをも満たし,労働者のうつ病発病につき業務起因性を認めることができるから,これを否定して療養補償給付及び休業補償給付を支給しないこととした本件各処分は違法であって取消しを免れない。