【第1審】市立病院歯科医師の懲戒免職処分に関する紛争(平成31年1月22日甲府地裁)
概要
被告・市が設置運営する市立病院の歯科口腔外科に歯科医師として勤務していたところ、市長から、患者に対する不当な診療拒否や本件病院の職員に対するパワハラ等を理由とする懲戒免職処分を受けた原告が、本件処分には市長の裁量権の逸脱・濫用等の違法があると主張して、本件処分の取消しを求めた。
結論
認容
要旨
歯科医師の不当な診療拒否等の有無について,紹介患者の診療予約に応じなかったことに問題がないとはいえないが,その他の点については,そもそも歯科医師において市が主張するような紹介患者の診療拒否をしたものとは認められないか,歯科医師において紹介患者の診療に応じなかったとしても,不当な診療拒否をしたものとはいえないというべきであり,また本件病院職員に対するパワハラの有無について,そもそも市の主張自体において,歯科医師が行ったとするパワハラ行為の内容が明確ではなく,その裏付けとなる証拠も,総務部長が電話で聴取した内容の説明があるにすぎないのであって,市が主張するような歯科衛生士に対するパワハラがあったと認めることはできず,さらに不適切な勤務態度について,地域連携室の職員が作成したノートについて歯科医師が都合の悪い箇所の書き直しをさせたといった主張については,こうした事実をうかがわせるものはなく,地域連携室における苦情の対応といったことについては,上記の不当な診療拒否があった場合に付随して問題となり得るにとどまり,以上を総合すると,市長が免職という懲戒処分の中でも最も重い処分を選択したことは,重きに失し,懲戒権者である市長の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものというほかなく,本件処分は違法であるから取消しを免れない。