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【第1審】ハラスメントを理由に受けた大学教員の減給処分が重く、請求の一部が取り消しされた例(平成25年10月9日高松地裁)

概要

被告・香川大学の教授である原告が、原告のゼミの学生であった者、香川大学、同大学理事、教授ら、元学長に対し、虚偽の事実に基づく懲戒申立て等を行うなどしたとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行うとともに、被告・香川大学に対し懲戒処分が不当であるとして、その取消し及び損害賠償請求を行った。

結論

棄却

判旨

教授は,大学院進学につき,学生1が就職希望である旨示唆し,教授の説得に対し萎縮している態度がうかがわれるにもかかわらず,日によって1時間ないし2時間にわたって説得作業を行うことはやや過剰な行為ともいえ,学生1が精神的負担を感じてもおかしくはない等から,学生1が教授からハラスメントを受けていると認識し,本件変更願に記載したとおりに感じたとしても無理なからぬところであり,学生1が虚偽の申告をしたとはいえない。
大学の理事として主張する発言の内容は,トラブルを円満に解決する目的にかなう合理的な内容である上,教授との対話の流れもごく自然であって,信用性は高いものと言え,また,労務担当理事の立場としては,できるだけ当事者双方の納得を得て,円満に問題を解決することが望まれるのであり,そのために一方的に教授を恫喝する必要性も認められず,また,Aは,労務担当理事から何度も事情は確認し,意思確認をした上で処分を求めており,この点で手続が違法であるとは認められない等から,人事審査手続を違法に進めたとは認められない。
学生1の本件研究室変更願いに記載した内容が虚偽であるとはいえないから,Aが教授からの聴取内容により,教授が,学生1に対してハラスメント行為を行っていたと理解しても不自然ではなく,また,Aは,過去にも教授から学生1がハラスメントを受けたとされる件を見聞きしていること,職場環境の改善の要求など,教授の他の職員に対する言動について学部長に改善要求を複数回出したことがあることなどからすれば,将来的に,教授の同じような言動が繰り返されることを防ぐため,学部長に,教授の処分を求める要請や言動に対する意見書を提出したとしても,そのこと自体が直ちに不法行為となるものでもない。
労務担当理事に不法行為は成立せず,また,人事審査委員会の手続が,本件懲戒規程に違反したなどの事情は認められないから,大学には不法行為は成立しない。
労務担当理事あるいはAに不法行為が成立しない以上,教授が,その監督責任を問うているにすぎないCについては,不法行為が成立する余地がない。
Bは,自分の経験に基づく正当な意見を示したにすぎないというべきであり,ことさらに虚偽の事実を用いて教授を陥れたかのような事実は認められない。
少なくとも懲戒処分理由である発言内容は十分特定されているというべきであり,確かに,学生1の潰瘍性大腸炎の増悪との医学的因果関係については判然としないものの,教授の発言により学生1が精神的苦痛を感じたという限度で,潰瘍性大腸炎の増悪と関連しているとも解しうるのであり,その意味で,本件懲戒処分の理由が不明確であるとも,理由がないともいえないこと等から,本件懲戒処分が違法であるとも無効であるとはいえず,本件懲戒処分の取消しは認められないし,また,本件懲戒処分が違法であることを前提とする慰謝料の請求も理由がない。

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