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従業員の損害賠償請求が退けられ、事業団の従業員に対する不当利得返還請求が認められた例(平成26年6月27日大阪地裁)

概要

(1)社会福祉法人である被告に雇用され、被告が大阪府の指定管理者に指定され受託経営をしている知的障害者の施設で勤務していた原告が、被告の従業員からパワハラを受けたとして、被告に対し、使用者責任に基づき、慰謝料の支払を求め、
(2)被告が、原告の賃金は各月の締日の翌日以降の欠勤については減額されることなく支給されるため賃金の過払が生じているとして、不当利得返還請求権に基づき賃金の過払金、及び、給与支給額が社会保険料の自己負担控除分等を下回るため、原告から徴収すべき額が生じているとして、立替払いによる求償権に基づき各種社会保険料の自己負担分及び職員互助会の会費の支払を求め、
(3)原告が、被告が原告の賃金から不当に天引きをしたことにより未払賃金が生じているとして、被告に対し、雇用契約に基づき、未払賃金の支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

元従業員が主査に対して業務上の問題点を指摘して改善策を提案していたことは,主査が黙って元従業員の言うことを聞いていたというだけであり,主査が元従業員に対して虚偽の事実を述べて陥れようとするまでの恨みを抱いていたことを裏付ける的確な証拠もないことから,これを前提とする元従業員のパワハラ主張も,採用することができず,また,事業団が期間満了前に雇止めの通告を撤回していることについては当事者間で争いがなく,実際には雇止めをしていないのであるから,雇止めの通告をもって,不法行為と評価することもできず,さらに,会議室での寮長とのやり取りに関する元従業員の供述は,具体性がなく,明確でないことから,元従業員の供述は,直ちに採用することはできないこと等から,元従業員がパワハラであると主張している行為は,いずれも不法行為と評価することができないか,前提としている事実を認めるに足りる証拠はないから,元従業員の事業団に対する損害賠償請求は理由がない。
元従業員は,平成24年6月29日から欠勤しており,欠勤時間について就業規則に基づき減額すると,賃金過払金並びに各種保険料及び職員互助会の会費が未払いとなるので,元従業員は,事業団に対し,過払賃金相当額,各種社会保険料の自己負担分及び職員互助会の会費の合計額を支払う義務があり、元従業員は、賃金から不当に天引きをしたとして,未払賃金の支払を求めているが,平成24年6月29日以降欠勤しているため,むしろ,過払金が発生しており,元従業員の事業団に対する賃金請求は理由がない。

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