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精神障害発症が業務に原因があるとされなかった事例(令和1年7月18日東京地裁)

概要

第1事件は、
従業員・原告が、夜間の巡回業務に従事中、同僚の男性職員から胸を触られるなどのセクハラをされ、それを警察に110番通報をしたことなどを理由に自宅待機命令を受け、その後に雇止めされたことなどにより精神障害を発病したとして、亀戸労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法に基づき休業補償給付を請求したのに対し、不支給処分を受けたことから、被告に対し、同処分の取消しを求めた。

結論

棄却

要旨

労働者の精神障害発病の業務起因性の有無について,労働者に精神障害発病の原因となるような心理的負荷をもたらした出来事としては,同僚との本件事件におけるトラブル及び自宅待機命令であり,その心理的負荷の強度は,前者については「弱」,後者については「中」であるところ,これらの出来事はいずれも本件事件に関するものであるから,関連して生じたものであるということができ,複数の出来事が関連して生じた場合,認定基準上は全体として一つの出来事として評価するべきところ,上記各出来事についてはいずれも心理的負荷の程度が「強」とまではいえないというべきであるから,全体的な総合評価としても「中」を超えるものではないと認めるのが相当であるから,認定基準によれば本件精神障害について業務起因性を認めることはできず,また認定基準を離れ,労働者の本件精神障害に至るまでの具体的な事情及び本件全証拠を総合しても,本件精神障害が「業務上の疾病」に当たると認めることはできないから,労働者の第1事件請求については理由がない。
亀戸労基署長及び同署職員の行為の国家賠償法上の違法の有無について,国は,亀戸労基署の職員が上記監視カメラ映像の確認を行った旨主張しているところ,前判示に係る監視カメラ映像の内容に照らせば,同労基署職員が同映像を確認したことも十分に考えられ,また,仮に同労基署職員が同映像を確認していなかったとしても,労働者災害補償保険法上,保険給付等に当たっての行政庁の調査権限が認められている規定は,いずれも調査権限を労働基準監督署長に付与したものにすぎず,これらの規定を根拠として,何らかの具体的かつ特定の調査を行うことが直ちに義務付けられるものではないと解されることに加え,同映像を確認しなかったことが労災保険制度の公正かつ健全な運営という観点から,著しく不合理であることをうかがわせるに足りる証拠もないから,これをもって国家賠償法上の違法性がある行為ということはできず,違法な公権力の行使が認められないから,理由がない。

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