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従業員の心因反応の業務起因性は認め難く、退職が有効とされた事例(令和2年3月27日東京地裁)

概要

被告会社の従業員であり、心因反応であるとの診断を受けて休職中であった原告が、被告から休職期間満了により被告から退職したものとされたところ、本件傷病は、被告が原告をセクハラの加害者として扱うなど職場環境配慮義務を尽くさなかった結果、発症したもので業務に起因するものであり、原告はその療養中であったものであるから、本件退職措置は、労働基準法19条に照らし無効であるなどと主張して、被告との間で
〔1〕労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに
〔2〕被告に対し、職場環境配慮義務違反に基づき、損害金及び遅延損害金の支払
〔3〕被告に対し、労働契約に基づき、本判決確定の日までの賃金と退職積立金、賞与並びに遅延損害金の支払をそれぞれ求めた。

結論

棄却

要旨

本件退職措置の効力について,会社の措置やその経緯には相応の合理性や元従業員自身の帰責性が認められるところであって,これらの点に照らせば,認定基準評価表項目30「上司とのトラブルがあった」を参酌して心理的負荷の強度を検討するにしても,その心理的負荷の程度はせいぜい「弱」にとどまると見ざるを得ないから,元従業員主張の時間外労働の点は,心理的負荷の程度として,これがあると認めるとしても(週60時間前後の時間外労働),せいぜい「弱」にとどまるというべきであるから,元従業員主張の点を踏まえても,心理的負荷の程度は,全体評価においても「弱」にとどまるから,本件傷病につき業務起因性は肯認し難く,また,元従業員は以上のほか元従業員が会社の心無い対応によって休職状態となったものであるから,会社が本件退職措置により元従業員が会社を退職したものと扱うことは信義則に反するなどとも主張するが,会社の所為に信義則に反するまでの点があるということはできないから,本件退職措置は有効と認められる。
元従業員は,会社が元従業員に対する職場環境配慮義務を負っていることを前提に,その義務違反として,本件トラブルに関し関係従業員から詳細に事実を聴取すべき義務の違反があったと主張するが,会社は本件トラブルの申告者であるAから事情を聴取しているばかりでなく,元従業員からもそのヒアリングにおいて,本件発言の経緯を含めて言い分を聴取しており,必要範囲の確認は施しているものと認められるから,その所為に不足があるとは認められないから,義務違反があるとは認められず,この点,元従業員は会社が元従業員に対するヒアリングにおいて曖昧な言葉で事実確認を行ったなどとも主張し,この点も問題視するが,Aから問題とされたトラブルの内容については明確に特定できており,そのように認めることはできないこと等から,職場環境配慮義務の違反があったとする元従業員の主張は採用することができない。

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