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パラハラ等に伴う懲戒処分無効確認請求において、処分が否定された例(平成27年9月25日東京地裁)
概要
被告・学校法人との間で雇用契約を締結し、被告の設置する大学で准教授又は教授を務めていた原告らが、同僚の教員や事務職員に対し、パワハラ行為若しくはこれを助長する行為、又は、これらを隠ぺいする目的で口止め行為をしたこと等を理由に、被告から停職を内容とする懲戒処分を受けたことから、同処分が無効であるとして、被告に対し、同処分の無効確認、停職とされていた期間の給与の支払等を求めた。
結論
一部認容、一部棄却、一部却下
判旨
Aに対する約2か月の停職についてみると,
Aの懲戒理由として、准教授であるXに精神的苦痛を与え,うつ状態に陥らせたこと等については,Xが外面的にはA及びBとの良好な関係を保っており,その深刻な被害感情に思いが及ばなかったとしてもやむを得ないところがあり,いきなり停職という重い処分を科すことの相当性には疑問を持たざるを得ないこと,さらに,Xに対し教授への昇任を辞退するよう要求したこと等,Xの被害申告を封じようとしたこと等,及び課長補佐であるYに対する強要行為等についても,Aに本件各処分以前に懲戒処分歴がないことを踏まえれば,より軽い処分を経て改善・更生の機会を与えないまま,大きな経済的損失を伴う停職を科したことは結論において社会的相当性を欠いたものというべきであり,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,大学法人においてその権利を濫用したものとして無効と解するのが相当である。
Bに対する約1か月の停職についてみると,Bの懲戒理由として、AのXに対する行為を助長したこと等については,Aのハラスメント行為自体,Xにおける深刻な被害感情について認識困難な面があり,より間接的・部分的な関与にとどまるBにAのいじめ行為の容認や助長があったとまではいえないのであり,Aのハラスメント行為を隠ぺいし,Xの被害申告を封じようとしたこと等,Xに対し,Aに係るハラスメントの申立てを取り下げるよう要求したこと等については,Bに本件各処分以前に懲戒処分歴のないことも踏まえれば,より軽い処分を経ないまま,約1か月の停職を科したことは結論において社会的相当性を欠いたものというべきであり,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,大学法人においてその権利を濫用したものとして無効と解するのが相当である。
本件各処分は無効というべきところ,Aについては,現在も大学法人との間の雇用契約が継続しており,将来の人事上の業績評価等において,停職とされたことが不利に考慮される相当程度の蓋然性があるから,その無効を確認する利益が認められるが,一方,Bについては,既に大学法人を定年退職しており,大学法人において停職とされたことの法律上の効果として今後不利益を受けることは想定できないから,その無効を確認する利益は認められず,その訴えは不適法というべきである。
A及びBは,本件各処分が不法行為を構成するとして慰謝料等の支払を求めているが,本件各処分が無効であることを前提として,Aについては処分の無効確認,A及びBについて停職期間中の給与等の支払が認められることに加えて,A及びBに精神的損害が発生したものとして慰謝料等の請求を認めるのは相当でない。