【控訴審】業務の過重と上司の言動が医師の自殺と因果関係が認められ損害賠償が認められた例(平成27年3月18日広島高裁松江支部)
概要
1審原告らが、1審被告らに対し、1審被告組合の運営する病院に医師として勤務していた1審原告らの子(亡医師)が、同病院における過重労働や上司らのパワハラにより、うつ病を発症し、自殺に至ったとして、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償金の支払いを請求し、1審判決は、被告らに対する請求を一部認容、一部棄却し、双方が控訴をした控訴審。
結論
一部変更
判旨
労働者が従事していた業務は,心身の極度の疲弊,消耗を来たし,うつ病等の原因となる程度の長時間労働を強いられていた上,質的にも医師免許取得から3年目で,整形外科医としては大学病院で6か月の勤務経験しかないという経歴を前提とした場合,相当過重なものであったばかりか,上司2名によるパワハラ,怒鳴られる,無能呼ばわりされる,器具で叩かれるなどの行為を継続的に受けていたことが加わり,一層過酷な状況に陥ったものと評価され,過重業務やパワハラが労働者に与えた心理的負荷は非常に大きく,経験等の点で同等の者にとっても,本件疾病を発症させる程度に過重であったと評価せざるを得ないから,これらの行為と本件疾病との間には相当因果関係が認められる。
組合には労働者の心身の健康に対する安全配慮義務違反が認められ,労働者の心身の健康に対する安全配慮義務違反については,上司は,組合に代わって当該医師に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者であったと認められ,その権限を行使すべきであったのにこれを怠り,また上司2名が行ったパワハラは,注意や指導の範疇を超えた違法行為であって,労働者に自殺という損害を被らせるものであるから,組合は国賠法1条に基づく責任も免れない。