夏が終わってしまってつらい

目覚めたら身ぶるいして布団にくるまってしまう朝がつらい。廊下に出るとひんやりしているのがつらい。青空が青すぎるのがつらい。かわいた清々しい空気がつらい。薄手の長袖を羽織って歩く人とすれ違うのがつらい。蝉の声が独唱に変わっているのがつらい。コンビニにおでんが並び始めたのがつらい。八百屋からスイカが消えたのがつらい。陽だまりがあたたかく感じるのがつらい。お散歩日和だねって若い夫婦が乳母車を押しながら話しているのがつらい。昼過ぎになると日差しがまぶしくなるけれど、歩いても汗だくにならないのがつらい。帰ってすぐにシャワーを浴びたいと思えないのがつらい。べとべとにシャツが湿ってクーラーの効いた部屋で扇風機全開にできないのがつらい。アイスコーヒーにするかホットコーヒーにするか少し迷ってからアイスコーヒーにするのがつらい。日陰をえらんで歩かなくて済むのがつらい。遠くのアスファルトがゆらゆら揺れないのがつらい。木立からどことなく文学の香りがするのがつらい。ベランダで育てているひまわりが元気なさそうなのがつらい。海とかお祭りとか、すでに思い出す対象になっているのがつらい。今年は線香花火してないのがつらい。それでも楽しかったからこそつらい。また一年待つのがつらい。夏が終わってしまってつらい。

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