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ポエム帳

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酔っぱらったときに書きます。
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2016年1月の記事一覧

裏窓

裏窓

 自由が決して簡単なものじゃないことを私は知っている。何故ならおおよそ手に入る自由のほとんどに不幸せが付随しているからだ。掴み取った自由と手放した自由は似ているようでまったく違う。掴み取った自由とはいわば勝利のあかしであるけれど、手放した自由は鏡張りの無限世界のように眼を凝らしたら息苦しいものであるからだ。人は安定しているときには不安定で刺戟的な夢を見たがるものだが、めまぐるしさの中で洗われている

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遠ざかる日々

 かつ、と窓を叩く音がしたかと思えば、酔いどれの私が硝子机にグラスを置いた音だった。甘い日本酒の香りが夜を華やがせて、久方ぶりの夜更かしに懐かしささえ覚えながら一月一日は今終わった。新しい年と聞いても、何の感慨もないのは、この年の瀬にもかかわらず、朝夕、私の日々はまったく血の気のない労働の色しかなかったからであろう。一年前のことを思い出しても、この季節はいつだって自堕落に溺れて、殊に正月の朝などと

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