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Mist
2016年5月25日 22:59
よく生きていられたな。今でも正式な大人と呼ぶべきか疑わしいこの貧弱な人間が、木漏れ日のように降る夢を、かき分け、かき分け、追いかけていた二十代のあるひとつの季節は、思い出すたび不思議なものだ。 あんな少しの金のために、自分というものの尊厳のすべてを差し出して、健康のすべてを差し出して、感情などどこにもなく、夢などみんな色あせて、あのころの私が哀れで哀れで、他人事のように慰めの言葉をかけてやりた