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Mist
2018年12月13日 00:01
思い出という箱を取り出して、初雪のように薄く積もった埃をはらい、蓋を外す。故郷やら、初恋やら、さまざまな記憶の欠片が無造作に詰め込まれたその箱を探ると、ずっと底の方に、長らく陽の光を浴びていないひとつの思い出があった。それはまだ高校生だったころ。私にはあんまり友達がいなくって、夢もなく、ただ家に帰るために家を出て、教室の隅で夕暮れを待つばかりの日々を送っていた。人と話すのがたまらなく苦手で、ふ