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曼珠沙華

383文字


読まれないまま
置かれた本の背表紙に


小さく書かれていた
タイトルを思い出せないままだ


何もおぼえていない夜には
耳鳴りとさみしさに
無理をして微笑む


こんなにも孤独を友人にしたことはなかった
思い出す微笑みは
忘れそうな夢の彼方で手を振る
その気配だけが赤い


置かれた本の挿し絵には
君の微笑みがほのかに咲くように
花が咲いていたと思う
赤い色の心だけが咲いていた


静けさの余韻と
秋の夜に想う
君の微笑みが見えないことと
君を悲しませた罪
もう秋の夜の彼方へと
ベテルギウスが連れ去る
さようなら


そのままで素敵なんだ
言葉を間違えたとき
伝わらない心と心が離れてゆく


その前に大好きだと
言えたならよかった
君に置いて行かないでと
まっすぐに言えたならよかった


秋の夜長にさみしくて
星は限りある命の光
オリオンの肩で
640光年の静けさとともに赤く輝く



赤色巨星のプロミネンスのように燃える
宇宙にも通じて咲くように

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べじさん
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