笹舟~想い川
七月
終わった詩をかき集めて
縫い合わせて
詩文の穴をふさごうと
破れたままのむき出しの
詩文のほつれに
泣いて
色褪せた詩文の顔色の
冴えない五十路のことばは
かつては魂のこもった
夢の輝き若者の物語だったこと
どこかに流れついて
川の上流からそっと
笹舟にのせた恋路を
ひろいあげるその手が
きっと貴女であればよかった
そんな記憶の水の音は
きらきら
流れて過ぎてゆくのみか
袂を分かつ貴女であれば
今は幸せでいるのだと信じた
詩文の顔色は青く若者のままの
純粋な想いを乗せるための
笹舟ではなお難しいとわかって
きらきらと見送ったままの詩文
あれからの月日に
忘れ去った想いのすべてが
詩文のほつれに浮かぶように
ズタズタにほつれにほつれて
なおも縫い合わせて
今さらであり
縫い合わせておるままに
詩文の顔色をうかがい
ここの端切れを切り捨て
貴女であればよかったとの
想いを引きちぎり
切り捨てて
今また詩を書くように思う
高尚な芸術のうらをみると
誰かがあてたあなたへの笹舟が
想い川の上流から流されているものと気づくだろう
誰も拾うことのない七月の笹舟
のせたことばの意味も知らずに
私も見送るだけの
ひろいあげるその手が
あなたであればよかったと祈るのみ
それでも
あなたも見送ることだろう
笹舟の揺れて流れて
想い川
ことばが過ぎ去るこのときに
決して手にすることはなかった
七月の笹舟
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