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哀雨
650文字
天上のかなしみの一滴一滴を
そっと集めたような
おだやかな川の流れを前に
ここが必ず人のための世であるという合理的理由など
あるはずもないと
清流は時に濁流へと姿を変えた
轟く竜の舞い
水中花の美に怒りを抱えたまま
のみこむ情愛の
汚れた眼に青空を映さず
希望の喪失と垣根の流された
ふるさとの幻影が
この世界の次元の箱庭の片隅か
言い様のない痛みと限界を感じた
ある日の喜びが一瞬にして露と消えたことも
ある日の悲しみが一瞬にして花と癒えたことも
同時期に表裏一体として現れた自分の姿だった
気づかないままに追い求めるもの
命の重みを君はここで
君は澄んだ瞳で見つめて笑っていたはずだ
おぼえのない思い出ほど思い出されることもあると
あの時に何故に選べなかったのか今となっては知る由もないのに
夏は生きていた
秋にはまったく死ぬのだろう
儚さの時をこれからも
きっと繰り返すけれども
それこそが人の世の理由だと
まだ降るかもしれない雨に投げる言葉は
もう止めてくださいとだけ一つぶ
ポツリポツリの無力で
僕は訴える
この哀しみは誰の手にも渡せない
僕は僕の哀しみと共に生きている
君には決して渡せない
酷いことの色味を知っているから渡さない
君には見せはしない
どうか安らかに
今宵も安らかに
眠れますように
君には決して哀しみを
哀しみを教えられないけれども
いつか知るその日まで
君は君を生きてゆけばいい
その日まで永遠に
僕は知りもしない祈りの言葉を
どこか遠い夕日の向こうに
悔し泣きしても
ただ投げつける
置き去りにした雨のなか
竜の舞い
僕は僕の哀しみと共に生きている
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