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夢のスケッチ

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詩のALBUMです。好きな自作詩を収録しました。
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#べじブルー

画用紙

画用紙をきりぬくと なんでも生まれてくる 何度でも生まれてくる 創世記 画用紙をみていると あなたのようだ なんにでもなれる 何でもいいんだ あなたはきりぬく 画用紙をまえにして なにを作ろうかな 何でもいいんだ こころのハサミで ぞうさんをきりぬく 色をぬろうよ 青い色で こころのハサミで 好きなようにきりぬくと こころのそこがあったかくて 手の届くところに ぞうさんが青いだなんて いいことだ 色はにじみでること 心がしたたること 自由な色で画用紙を きりぬくた

風信子へ

300文字 去年のヒヤシンス さみしいさようならのあとも この星が一周する 出会いも別れも巡り合わせ 優しい時の流れ 君も星屑のひとつぶなら 僕も星屑のひとつぶ 突然に今年も花を咲かせた君は 星のしずくだ 宇宙のたね 巡り合わせの不思議 君と僕は どれだけ遠く離れていても きっと 星屑のひとつぶだった 同じように今このとき 宇宙に生きて空を見上げて 地上におりているただそれだけ ただ唯一無二 ここが小さな宇宙 じつは宇宙に浮かんでいるだけの君と僕だ 順番

朝より

180文字 目覚めたらすぐだ 詩を書きたくて書きたくて たまらなくなるのは 寒い証拠 今はまだ冬だから 白い吐息は 雲になって 朝の街を霞でおおう そんな朝 青空のすみっこ 背のびして見上げる せまい青空に 雲を描いてみたら 君にも見えているといいなと想う 青空に雲を描いてみて 君にもそれができる きっと大丈夫 雲が広がることもある 雨の約束 それもいいのに 哀しくなるなんて もったいない そんな気がしない? そんな気がするよ

朝へ

280文字 青空のむこうにいるのなら ここにいることと同じ そばにいて 願う気持ちは 雲のシルエットのよう あなたが大切ですと そっとつぶやいたら 川沿いの並木道には さえずる小鳥が答えあわせ 歌声がひとつぶきこえた 冬の日差しのむこうにも 遥か遠く春のメロディ 最初に歌うのは誰 並木をなでる そうあの風だねと ぼくはうなずく 優しさのわけさえ 言葉にできず どこかにいるのかな ぼくはあなたが大切でしたと この手を差しのべ微笑んで それだけでいいと それだけでよかっ

おかあさんのとなり

420文字 パンのみみ パンのみみを切って パンを焼いて サンドイッチでほっ パンのみみ パンのみみはかたくて 痛くてパンのみみ苦手 パンのみみを揚げて おさとうまぶして おいしい揚げパン パンのみみ好き パンのみみを切って こまごまに切って ばらばらにして こなごな ハンバーグのたねに入れたね パラパラ パラパラ あったかくて長くてやさしい手 パンのみみはすごい 背のびして おかあさんのとなり 見上げたキッチン いいにおいと パンのみみ あんなにも 安

【詩論】~青のスケッチ~べじブルー

『心が動いたとき…詩が生まれる』 ※3000文字 私なりのアフォリズムを記すならば、 『とある現象の一瞬を捉え、それを言葉に置き換え、ことばによって再構築した世界を描く。』 これこそが、私が詩を物す際に心掛けている原点である。 言葉、ことばによる世界の再構築作業の連続、これが詩であろう。 ここでいう『世界』の定義とは、生命の営みを続けてゆくことそのもの。 マクロな大宇宙という生命体もミクロな個々のかけがえのない生命も、集合的無意識論の視点でみると、原始の海のような混沌と

過ぎた日のあなた

314文字 夕去りのパレットに 明日色をのせて しずかに時は過ぎゆく 影絵のようだ ここにそのまま生きていることは 小石のように見向きもされない ぼくを蹴って下さい、もしもつらいなら ずいぶんとがんばりましたね きっと ひとりじゃない 生きていく道のりは遠けれど あなたのはやさは かけぬける光のようだった 木陰のもとをすりぬけて 青空がまぶしい明日へといそぐ 足早に あなたはゆっくりでもいい たくさん自分を語ってもいい 話しすぎてもいい 小石のぼくは すべて

曼珠沙華

383文字 読まれないまま 置かれた本の背表紙に 小さく書かれていた タイトルを思い出せないままだ 何もおぼえていない夜には 耳鳴りとさみしさに 無理をして微笑む こんなにも孤独を友人にしたことはなかった 思い出す微笑みは 忘れそうな夢の彼方で手を振る その気配だけが赤い 置かれた本の挿し絵には 君の微笑みがほのかに咲くように 花が咲いていたと思う 赤い色の心だけが咲いていた 静けさの余韻と 秋の夜に想う 君の微笑みが見えないことと 君を悲しませた罪 もう秋の夜の

秋桜

130文字 コスモスが咲いたよ コスモスにみとれた 風にゆれたね コスモスが笑った コスモスが咲いたら 宇宙が咲いたね 宇宙の星の ここにだけ ひとつコスモスが咲いた 宇宙が咲いたら 秋が咲いたね 見上げた空に ひとつぶの風がキスしたら そっとコスモスが咲いたよ みんな咲くといいね

哀雨

650文字 天上のかなしみの一滴一滴を そっと集めたような おだやかな川の流れを前に ここが必ず人のための世であるという合理的理由など あるはずもないと 清流は時に濁流へと姿を変えた 轟く竜の舞い 水中花の美に怒りを抱えたまま のみこむ情愛の 汚れた眼に青空を映さず 希望の喪失と垣根の流された ふるさとの幻影が この世界の次元の箱庭の片隅か 言い様のない痛みと限界を感じた ある日の喜びが一瞬にして露と消えたことも ある日の悲しみが一瞬にして花と癒えたことも 同時期に表裏

飛行機雲

飛行機のほどけた帯のシルクが 青い大空に 突如現れて 見上げるあなたを 旅路へと 誘う直線上の彼方の 懐かしのふるさとの 心にある風景画を 人は見出だすのだ 何万色の帯模様に 航空機の帯留めは 遥か彼方のシルバー 宝石の輝きが見えたら 大空を見上げて 宝石の輝きが見えたら 白い帯に 夢をみるのか 朝月のそばをよこぎる帯に 輝きを見出だして 想う おおらかな気持ちでいたい まちがえても引き返すことのない人生 悲しくてうなだれて失くした夢の続き すべての私をシルク

赤とんぼ

200文字 心を燃やして 奮い起たせるために 赤とんぼは赤く染まった けっして振り返るためではない 置いてきたんだね その後悔を懐かしむためではなく 燃やすために赤く染まった 今またこれからだと スタートラインを描く 大空へと翔び立つために赤く 赤く 赤く 夕焼けは 明日へむかって飛び立つための色だ 茜色の空を駆ける 赤とんぼを見上げて遥か秋の彼方へ 君の瞳が輝くそのために 赤とんぼは赤いのだ 誰に問うこともない夢の続き 赤とんぼのそのこえを ぼくが聞こう

夏の逃げ水

360文字 街を見下ろせる丘の上の公園に 紫陽花がさようならを告げるころ 午後の逃げ水がひろがる歩道を歩く あの日もこんな夏の一コマがあったと思う 地上171cmは空気の揺らぎ1/fの迷い そよ風の向こうには君の声がきこえて 明日からの手紙がポストに届いている 午後の逃げ水を追いかけて 夢の向こう側へとシロサギは先に行く 飛び立つ姿は幸せの象徴だと君がいう 並んで歩いたねそんな昨日も置いてきて 逃げ水を追うように明日の話をしよう きっといいことがある丘の上の公園

おはよう

250文字 昨夜からの雨の音 おきたての心は 言葉のたまごをたくさん生みました そんな朝には フライパンに火を入れて こんがりと ぼくがことばに焼き上げようか 美味しい目玉焼きが 二人分出来上がるとうれしいね 塩もコショウもいらない ただきみと長年二人で暮らした 唯一無二の時間を サッと振りかけて完成する 心の料理を 朝の食卓に盛りつけよう 焼きたての美味しいことばと 不揃いのコーヒーカップ 最初におはようっていうよ 今朝の調子はどうかな 今日も調子いいよ