太陽の嘘つき
なんとなく信じていたものに振り回されるだけ振り回されて、あっけなく時は過ぎ、僕はぼろきれの様になってしまって、縋れるものすらなくなったから、みなさん、「さようなら」ということなのです。
太陽も青空も、いかにも平等で人道主義みたいな顔をしていやがるが、僕を救ってくれたことなんか一度もない。
僕は歩いている。
上野の、蒸されるような熱気とコンクリートのひりひりした照り返し、酔っ払いの痴態を、右から左に流している。
汗でじっとりした服のぬるさと頭の脂のにおいにも慣れてしまったころ、客引きに言われるがまま狭い居酒屋に入ったが蒸し加減は相変わらずで、僕もジョッキも、垂らすほどの汗をからだいっぱいに光らせていた。
僕は焦りすぎていたんだ。何かに追われ続けていたのに、振り返っても誰もいないのだ。
田舎の友人を集めてバンドを組み上京したはいいものの、仲間は流行りに飛びつくばかりで、方向性は二転三転、当然ファンもつかず、僕は3年目にしてバンドを辞めた。
新しいことができそうな、まっすぐ日の差した晴れた日だったのだ。
それからしばらく、単身で音楽活動を行っていたのだが、長く付き合っていた恋人とも別れてしまった。あの日も、全国の校長がこぞって讃えそうな青い青い空をしていた。
それが今ではこのザマだ。
太陽の嘘つき。
青空の嘘つき!
ペテン師め。期待をさせるだけさせておいて、お前は何も与えないのか。
かの日のお前は、救いの手ではなかったのか。
僕はもう疲れてしまったよ。
さようなら皆さん。さようなら。