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「今すぐ帰れ!」の優しさ。

まだ「パワハラ」なんて言葉がない時代の話。

「何やってんだ!お前今すぐ帰れ!」
職場で上司に怒られて、涙ながしながら家に帰った思い出があります。

これだけ見ると「仕事ミスして怒られて泣いて帰った話」だと受け取られるでしょう。
ただ僕にとっては人生観を変えてくれた優しい言葉があって、10年以上たった今でも感謝している上司との思い出です。

少しだけ思い出話をします。

当時の僕はチェーン店で店長をやってました。
接客の仕事が楽しくて、最年少で店長に就任したそんな時でした。

その日、店内にはたくさんのお客様がおられ、本部からマネージャーの上司が応援に来てた事もあり、僕も慌ただしく仕事していました。

ふと僕の携帯が鳴りました。
バックヤードに移動し電話をとりました。

「さっきの電話、なんだったんだ?」
戻ってきた僕に上司がいいました。
「あ、ええ、姉からでした。」
そう伝えて仕事に戻ろうとした時、上司に止められました。
「どうした?」
上司は何か感じたんでしょう。 
僕は電話の内容を正直にいいました。

実は数日前に父が倒れてたそうで、でも母親は「あの子は今忙しく頑張ってるから」と僕には伝えなかったらしく、それを姉が知って僕に連絡をしてきた、という内容を。

「まぁ、明後日休みなのでその時に実家に帰えろうと思ってます。」と軽く上司に言って仕事に戻ろうとしました。

「何やってんだ!お前今すぐ帰れ!」
「え、でも今日は忙しいし明後日休みですし…。」

「家族大事にできない奴が、いい接客できるか!」
この言葉が僕の #心に残る上司の言葉 です。
今でも僕の心の指針です。

間違いなく忙しい日でした。
でもきっと上司も僕を大事にしてくれてたからこそ「帰れ!」と言ってくれたのだと思いました。

ぶわっと涙が溢れて、それを隠す意味もあって無言で深々と頭を下げて僕は早退しました。

ギリギリ終電に間に合い、実家に着きました。
母親はビックリしてましたが、経緯を話すと涙をこぼしてました。病院は面会時間外だったので翌日父に会う事ができました。
結果、父は手術も成功し大丈夫でした。
ただあの時帰ってなかったら、もう会えない可能性もあったと思うと、あの時の上司に感謝しかありません。

あれ以来、お客様だけではなく、自分の家族や取引先や同僚といった周りの人を大切にしてこそ「いい仕事」ができると思い続けてます。

「働く」とは「はた(周り)をらく(楽)にする」
きっとこれはどの時代でもどの仕事でも通じる事だと思ってます。

「ただ、あんまり見返りは返ってきませんね。」
いつか上司に再会できたなら、そう愚痴ってみたいです。

この文章があの時の上司に届けばいいなぁ。

#心に残る上司の言葉

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