Goddesses
※文章の音声化についてはこちらをお読みください。
https://note.mu/misora_umitosora/n/nc76e754673e5
【カレン】
20代女性、ハッキリとした性格。面倒なこと難しいことは大嫌いで感情に流されやすい。野性的な魅力を持つ。最前線での任務を得意とする。
【ミヤビ】
20代女性、穏やかな性格。理論的で理性的、自分の気持ちよりも合理的判断を優先しがち。洗練された魅力を持つ。バックアップ任務を得意とする。
【ボス】
壮年の男性。カレンとミヤビのボス。様々な依頼を二人に伝える。
【如月セイジ】
マッドサイエンティスト。化粧品アフロディーテシリーズの開発者。天才だが、常識やモラルなどの認識が希薄。研究以外に興味がない。
【キャスター】
やり手のニュースキャスター。男女不問。男性であればボスや如月と兼ね役可能。
【警備員】
元軍人の男性達。ボスや如月と兼ね役可能。
【場】
二人の部屋→製薬会社→二人の部屋
【声の年齢イメージ】
カレン≒ミヤビ<如月<ボス
※SEやBGMはあくまでイメージ
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■場:二人の部屋
(OP曲)
(カレン、ドアをノックする)
(OP曲、そのままBGMに)
カレン「ミヤビ~、化粧水切れちゃったんだけど貸してくれない?」
ミヤビ「この間もそんなこと言ってなかった? ちゃんと買い置きしておきなさいよね」
カレン「いいじゃない、どうせミヤビもアフロディーテシリーズ使ってるんでしょ?」
ミヤビ「私の化粧品を買い置き替わりにしないでくれる?」
カレン「そういう意味じゃないってば」
ミヤビ「解ってるわよ。ほら!」
カレン「サンキュ」
ミヤビ「その代わり、新しいの買いに行くついでに私の分もお願いね」
カレン「了解。ちゃっかりしてるんだから。……それにしてもこれ本当に効くわね」
ミヤビ「"独自開発した人由来成分であなたの肌を守ります"だっけ? 私もアフロディーテシリーズを使い始めてから肌の調子が良くて助かってるわ」
カレン「赤ちゃんの肌みたいにぷるぷるツヤツヤ。化粧ノリもいいし、男に声掛けられる回数も増えたし止められないわ~!」
ミヤビ「それで最近外泊が多いわけね……」
カレン「他人事みたいに。自分だって最近夜遊びが多いじゃない」
ミヤビ「あら、気付いてた?」
カレン「当然でしょ」
(電話が鳴る)
(ミヤビ、電話に出る)
ミヤビ「はい」
ボス『私だ』
ミヤビ「おはようございます、ボス」
カレン「ボスー! 最後にクリーム付けるからちょっと待って!」
ボス『おや、お邪魔だったかな?』
ミヤビ「いえいえ、お気になさらず」
カレン「お・ま・た・せ。ボスがわざわざ連絡くれるってことは……仕事ね?」
ボス『理解の早い女性はとても魅力的だな。今回の依頼はいわゆる"産業スパイ"だ。岩崎製薬の最高機密情報を持ち帰って欲しい。その際、殺人や爆破などの人や物を破壊する行為は禁止する』
カレン「……最後の注意事項は何なの?」
ボス『依頼に関する質問は受け付けない。資料はいつもの方法で送る』
ミヤビ「了解です。確認次第行動に移ります」
ボス『君達二人なら夜のデートの前に片付く仕事だろう。お相手の男性を待たせないように。……健闘を祈る』
カレン「了解」
(ミヤビ、電話を切る)
ミヤビ「岩崎製薬……アフロディーテシリーズを販売してる会社だわ」
カレン「そうなの!? じゃ、社内に化粧品たくさんあるわよね……」
ミヤビ「念のため言っとくけど、現場にある物を無断で持ち帰ったりするのは禁止よ」
カレン「冗談よ、冗談。やだなーそんな目で見ないでよ」
ミヤビ「うふふふふ。そうよねーカレンはプロ中のプロですもの。そんなことしないわよね」
カレン「あはははは。さーてとデートの前に軽く片付けちゃいますか!」
■場:岩崎製薬(Lv5区画入口)
(ミヤビ、小型端末を操作している)
ミヤビ「セキュリティシステムを制圧。ビル最上階にあるLv5区画を封鎖。……何を隠してるのか知らないけど随分厳重な警備だわ。一般社員は立ち入り禁止区域だからほとんど人気はないわね。この区画にいるのは数人の研究者と、世界的に有名な警備会社の警備員達だけよ」
カレン「あらSKH? 随分警備にお金かけてるわね。あそこの警備員ってほとんど軍人あがりでしょ」
ミヤビ「それだけ隠したい秘密があるってことでしょうね。Lv5区画は完全に社内ネットワークから切り離されてるわ。データを盗み出すには実際に最上階に行くしかない。最上階まで行けば元軍人さん達がお出迎え。ここまで守りを固めて……何を隠してるのかしら」
カレン「ま、何にせよ今回は破壊活動なしだから穏便にいくわよ」
ミヤビ「了解」
カレン「穏便なのは苦手なんだけど……ね!」
(カレン、換気ダクトを蹴って通気口から飛び出す)
(カレン、廊下に着地すると同時に見張りの警備員を気絶させる)
警備員「うっ……」
(警備員、廊下に倒れる)
(ミヤビ、通気口から飛び出し廊下に着地する)
ミヤビ「お見事」
カレン「当然! これくらい楽勝よ。でも侵入がバレて集団で応戦されると面倒だから……はい、5分くらいこれ着けてて」
ミヤビ「防毒マスク……」
(二人、防毒マスク装着)
カレン『雑魚の皆さんには眠ってもらうわ』
(カレン、スイッチを押す)
(ビル内各所、睡眠ガスが噴き出す)
ミヤビ『じゃ、その間に一番奥にある部屋に向かいましょうか』
カレン『……やっぱり一番奥なんだ』
ミヤビ『いつの世も目的のモノはビルや塔の最上階、一番奥にあるものよ。お約束でしょ』
■場:岩崎製薬(最奥の研究施設)
(カレン、警備員と戦闘し気絶させる)
警備員「ぐっ……」
(警備員、その場に倒れる)
カレン「いっちょ上がり!」
(二人、最奥の研究施設に向けて移動する)
ミヤビ「さすが元軍人さん達、大人しく寝ててくれないわね」
カレン「ボスがあんなこと言わなきゃもっとド派手に暴れてやるのに!」
ミヤビ「あら物騒だこと」
カレン「ついさっき"破壊活動禁止じゃなかったら爆破してやるのに"って言ってた人間の言葉とは思えないわね」
ミヤビ「あらいやだ、聞いてたの?」
カレン「怖い怖い。……さーて着いたわ」
ミヤビ「開けるわよ」
(ミヤビ、小型端末を操作する)
(解析音)
(ドア、ロック解除音と共に開く)
カレン「先に行くわ」
(カレン、銃を構え部屋に入る)
(二人、安全を確認し部屋の内部を調べ始める)
(ミヤビ、部屋中にある水槽に目を止める)
カレン「何これ。……標本?」
ミヤビ「凄い量ね。ここは一体……」
カレン「何か気持ち悪いわね。頭の大きなトカゲ?」
ミヤビ「ちょっと待って、もしかしてこれ――」
如月「おや、来客の予定はなかったはずだが」
カレン「誰!?」
(カレン、素早く声のした方に銃を向ける)
如月「見た所警備員ではなさそうだな。君達こそ誰だ」
カレン「名乗る程の者じゃないわ」
如月「まぁいい。研究の邪魔をしなければ構わないさ」
(ミヤビ、如月の白衣に付けられたネームタグに目を止める)
ミヤビ「Dr.KISARAGI……あなたが如月博士?」
如月「おや、君は私を知っているのか?」
ミヤビ「如月セイジ、アフロディーテシリーズの生みの親。……こんな所でお会いできるとは思いませんでしたわ」
カレン「え!? この男が?」
如月「見た所二人とも女性のようだが……もしかしたら私の開発した商品を使ってくれているのかな? だとしたら光栄だね」
ミヤビ「……博士、ここは一体何の施設ですか?」
カレン「どうしたの? こんな男さっさと気絶させて――」
ミヤビ「ちょっと待って! 凄く嫌な予感がするの。当たって欲しくない最悪の予感がね。……博士答えてください。この施設は何ですか? この部屋中にある標本のようなものは何ですか?!」
如月「ここはアフロディーテシリーズの開発ラボ。そしてそこにある君達が"標本"と呼んでいるモノはアフロディーテの原材料だ」
カレン「これが材料?」
ミヤビ「"独自開発した人由来成分"ですか」
如月「おや随分顔が青ざめてるぞ。たまにこのラボを見てそういう顔をする人間がいるが、私には理解できないね」
カレン「全然話が見えないんだけど。この勾玉に黒い点が付いてるみたいな標本が材料?」
如月「理解の遅い女は嫌いだ。それは人間の胎児だよ」
カレン「胎……児? これ……全部!?」
(カレン、青ざめた顔で部屋中を見回す)
ミヤビ「説明して下さい。これはどういうことなの!?」
如月「君は既に察しているのかと思っていたが……まあいい。その胎児は堕胎という行為で発生した産業廃棄物だ。それを分解し、必要な成分を抽出する。このラボでは毎日そういう研究が行われているんだよ」
カレン「あんた正気なの?!」
如月「私はいたって正気だが」
カレン「胎児で化粧品作ることのどこが正気なのよ!」
如月「言っただろ、それは産業廃棄物だ。再利用して何が悪い」
カレン「お前!!」
(カレン、如月に銃を向ける)
ミヤビ「カレン!」
(ミヤビ、素早くカレンを止める)
カレン「ミヤビ! 何で止めるの!?」
ミヤビ「私達の仕事は何!? ボスの言葉を忘れたの!?」
カレン「こんな奴をかばうの!?」
ミヤビ「頭を冷やしなさい! 私達は正義の味方でも、彼を逮捕したり裁いたりする者でもない!!」
如月「はははははは! これは傑作だ。女が捨てたものを女のために再利用してるんだ。それなのに当の女に悪く言われるとはね。今やアフロディーテシリーズは世界シェアNo.1の化粧品だ。君達だって一度くらい使ったことはあるだろう?」
カレン「殺してやりたい」
如月「野蛮な女だな」
ミヤビ「……カレン、データの吸い上げに入るわ」
カレン「ミヤビ?」
(ミヤビ、施設内のPCを操作し始める)
如月「そちらの彼女は優秀だな。一時的な感情に流されず自らの仕事をきちんと理解しているようだ」
カレン「こんの!!」
(カレン、如月をぶん殴る)
如月「っ! ……先程の話では、君の仕事に私を殺すことは入っていないようだが?」
カレン「黙れ」
(カレン、如月に向け銃を構える)
カレン「それ以上しゃべったら引き金を引く。私は野蛮だから仕事とか私情とか、上手く区別できないよ?」
(解析音)
(ミヤビ、施設内PCと小型端末を操作している)
ミヤビ「データのコピー完了。撤収よ」
カレン「こいつは?」
ミヤビ「"破壊行為の禁止"……ボスの言葉を忘れないで」
如月「用が済んだらさっさと帰ってくれ。研究の続きをしたいからね」
ミヤビ「あなたをここで殺したりはしない。でも……後で必ず自分のしたことを後悔させてあげるわ」
如月「はっ! 君もそこの野蛮女と同じか。産業廃棄物に余計な感情移入をし過ぎだよ」
ミヤビ「胎児はただの廃棄物じゃない」
如月「同じだ。不要だから捨てる。胎児が廃棄物でないと言うなら、何故捨てるんだい? 何故堕胎なんてするんだい? 要らないからだろ?」
ミヤビ「…………」
如月「おや、反論しないのかい? これだから君達女は――」
(カレン、如月に向けて発砲する)
如月「ぐあああああああああ!!」
カレン「あ~ら、ごめんなさい」
ミヤビ「カレン!」
如月「ああああああ……ああ」
カレン「私はね難しいことも面倒なことも大嫌いなの。堕胎がどうとか廃棄物がどうとか、どうでもいい。だけど……今はっきりしてることが一つだけある。あんたが気に入らない、それだけ」
如月「足が……足が!」
カレン「安心しなさい、そのくらいじゃ死なないわよ。とりあえず今日は帰るわ。あんたとのケリは後で必ず付けてあげる。……残りの命を楽しんでおきなさい」
■場:二人の部屋
(鳥の鳴き声)
カレン「おはよ、早いわね」
ミヤビ「流石に昨日は夜遊びしなかったみたいね」
カレン「まあね。私にもコーヒー頂戴」
ミヤビ「濃い目のブラックでいい?」
(ミヤビ、ミヤビのマグカップにコーヒーを注ぐ)
ミヤビ「昨日のデータはボスに送っておいたわ」
カレン「……了解」
ミヤビ「はい、コーヒー」
(ミヤビ、マグカップを机に置く)
カレン「サンキュ」
(カレン、テレビをつける)
キャスター『次のニュースです。女性用化粧品アフロディーテシリーズを販売する大手製薬会社、岩崎製薬で新薬開発に関する贈収賄があったことが明らかになりました。現在警察が関係者に事情を聞くと共に、岩崎製薬本社に立ち入り証拠品などを押収しています。化粧品だけでなく薬品関連でも大きなシェアを持つ会社なだけに、製薬業界に大きな波紋が広がっています』
(カレン、無言でコーヒーを飲む)
キャスター『また贈収賄発覚とほぼ同時に、岩崎製薬の産業廃棄物の不正流用に関係する内部資料がマスコミ各社に送られて来ており、そちらの調査も行われているもようです。この資料がインターネット上で既に公開されているとの情報もあり、インターネットを利用した内部告発との見方も出ています。……それでは岩崎製薬本社前と中継が繋がったようです。佐藤さん、そちらの状況を教えてください』
カレン「これミヤビでしょ」
ミヤビ「さあ、どうかしらね。それより警察と検察、マスコミの動きが妙に早いけど……カレンの仕業?」
カレン「さあ、どうかしら」
ミヤビ「まあいいわ。今日暇なら新しい化粧品買いに行かない? 全部使いものにならなくなっちゃったし」
カレン「奇遇ね、私も今そう思ってた所」
ミヤビ「じゃ、行きますか」
カレン「ついでに美味しい物も食べて、服とか鞄とか靴とか買わない?」
ミヤビ「いいけどそうなると別行動よ? カレンと私の趣味全然違うんだから」
(声フェードアウト)
(ドアが閉まる)
(ED曲)
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人称や語尾変更はご自由にどうぞ。