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秘密兵器

少し早めのメリークリスマス。
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ここはモノカキサンタが集うクリスマスプレゼント製造工場。
イブまで1ヶ月をきった今、サンタ達は大忙しでプレゼントの準備にあたっています。
それぞれいったい何を送ろうというのでしょうか?

「ゲーム達は急いで箱に入って。そこのぬいぐるみ君、遊んでないで準備しようねー」
作務衣にサンタ帽という奇妙な格好のみそらは、飛び交うおもちゃ達の間を足早に駆け抜けた。
室内を走る汽車に次々とぬいぐるみが飛び乗る。汽車が雪の積もった小山のトンネルを抜けると、ぬいぐるみ達はキラキラした半透明のラッピングの中で澄まし顔をしていた。
「三輪車と自転車にはリボン!」
光沢のある真っ赤なリボンが優しく自転車達を包み華やかに結び上げる。
「楽器達は――」
ピアノやカスタネット、木琴にフルート、バイオリンとタンバリン。多種多様な楽器は子供向けの小さな物ばかりだ。そして自分達に向けられた声にピョンピョンと飛び跳ね何かを主張している。
「え? 音楽?」
どこからともなく飛んできたタクトが胸を張り優雅にひらめく。定番のクリスマスソングを軽快にアレンジ、室内に柔らかな空気が広がった。
「そうだね。せっかくのクリスマス準備だし楽しく行こうか!」

かこかことぽっくり下駄を鳴らし、みそらが部屋中央にあるはしごに飛び移った。
「洋服達はダンスが終わったら包装するからツリーの下に集まって。あ、靴下がちゃんと両方あるか自分達で確認するんだよ? トナカイ! そっちはお願いね」
ツリー下で待機していたトナカイが心得たとばかりにいななく。色とりどり様々なサイズの洋服達が一斉に踊りながら室内を横切っていく。
それを上から笑顔で眺め、みそらはパチンと指を鳴らした。
はしごの更に上、部屋の天井を埋めるほど大きな天球儀が輝きを増す。光をまとった立体星図に部屋中のおもちゃ達が動きを止め天を見上げた。
「今の所クリスマス付近の天候は良好。素敵なクリスマスになりそうだね」
そこかしこで歓声が上がった。
みそらは勢いを付けてはしごから飛び降りると、腕を上げ頭上に大きく円を描く。それを待っていたように部屋中のキャンドルに灯りがともった。

それぞれの進行状況を確認するみそらが雪だるまの前を通りかかった時、視界の隅に何かが引っ掛かった。明るくなった室内の一角、二階から続くすべり台の影で何かが動いたのだ。
「……こんな所で何してるの?」
そこにいたのは本達だった。光を避けるように身を寄せ合う本達は悲しそうに体を揺らす。
「どうしたの? ――うん、うん。……そっか。それを気にしてたんだね」
バサバサバサと泣きつくように本がみそらに飛びつく。優しくその背表紙をなでながらみそらは言った。
「大丈夫。どんなに時代が変わっても本を好きな子供達は沢山いるよ。それに君達にしか出来ないこともある。何か分かる?」
首を振るように本達のページが行ったり来たりすると、みそらは悪戯を思いついた子供の顔で笑った。
「秘密兵器があるんだ」

もしあなたの受け取ったクリスマスプレゼントが本だったら。
こっそり最後のページをめくってみてください。
もしかしたらみそらサンタの秘密兵器がはさまっているかもしれません。
『お父さんお母さんと一緒に本を読める券』
お父さんお母さんの腕の中で触れる物語は、きっと世界で一番素敵なプレゼントになるでしょう。

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素敵なイラストは小山さとりさんれとろさんに描いていただきました。




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