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モノクロ

※文章の音声化についてはこちらをお読みください。
https://note.mu/misora_umitosora/n/nc76e754673e5

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何もない四角い部屋で一人、横になっている。
どのくらいそうしていたのか解らない。
不意にこの部屋に自分以外の人間がいることに気付いた。

子供が泣いている。
扉の前でありったけの声をあげて泣いている。
泣くことで自分の気持ちが伝わると、自分の願いが叶えられると信じて泣いている。

イライラした。
どんなに泣こうが叫ぼうが誰の耳にも届かない。
優しく手を差し伸べてくれる存在なんていないのに。

「泣くな!」

思わず怒鳴り付けた。
突然の大声に驚いて泣き止む子供。
でもそれはほんの一瞬の沈黙だった。
火が付いたように再び泣き出す。

静かだった部屋が一気に騒音で満ちる。
うるさい、うるさい、うるさい。
頭の中にかん高い声が響いた。
ただただ助けを求めるその泣き声。

「うるさい!」

気付いた時には体が動いていた。
扉の前から子供を無理矢理引き離し、右手を振り上げる。

目が合った。

驚きと恐怖と不安。
強張る小さな体。
大粒の涙をためた瞳。
その中に映る自分。

動きが止まる。

時間が、止まった。


「ごめん……ごめんな」

一気に血の気が引いて力が抜けた。
思わず小さな体を抱き寄せる。

「怖かったよな」

体から伝わる温もりが心を溶かす。
安心したのか腕の中から嗚咽が漏れ聞こえた。
どうしていいのか解らず、恐る恐る頭をなでる。

そして思い出す。

「……お前は俺だ」

涙を浮かべたまま、幼さの残る表情で目の前の子供がニコリと笑った。
見覚えのある顔。
自分の幼い頃の写真と同じ顔。

「助けを求めていたのは俺だ」

――キィ。
微かな音を立てて扉が開いた。
ほんの一瞬そちらに意識を取られる。
気付くと子供の姿は消えていた。

それでも両手に残る確かな温もり。


少しだけ。
ほんの少しだけ部屋の外に出てみようと思った。
今はまだ無理だとしても、いつかは。

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アドリブによる台詞の追加やアレンジ、人称や語尾変更ご自由にどうぞ。

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