石

「石」


今日のキーワード「石」


「とに、謝」



…冷えるね。


…説明していい?


何で今、「冷えるね」って言ったのか。


今ね、「寒いね」と「冷えるね」のどっち使うかで迷ってたんだけど


6:4で「冷えるね」が勝って、それで口から出てきた。


ほんとだよ。


「冷えるね」の方がさ、なんだか文学的じゃん、ってとっさに思った。


「寒いね」、だとさ、物理的な意味合いが強い印象ない?


まぁ、これはあくまで僕の感覚だから。


100パーの同意は求めてないけどね、うん。


今回は、僕の言葉の流通経路をバラしてみました。


楽しんでいただけたかなっ?


うん。


…あ


雪…?


えー、早いな。


都内で、こんなに早くね、拝めるとはね。


うん。


すごく、キレイ。



あ、蜘蛛だ。


ごめん、小さな蜘蛛だった。


…うん。


上から降ってくるってとこしか共通点ないのにね。


あと文字数。


やになっちゃうね。



…悪かった。


本当に。


だからさ、その手に持ってる、大きな石を置いてくれよ。


いや、両手とも。


あんまり変わらないよ。片手だけじゃ。


あー!、ほんっとに。ごめん。


立場がね、そんなこと言える立場じゃないのにね!ほんと、口数減らしまーす。


…石だけね、ほんとに、置いてほしーなーって。


思ったり。


思わなかったり。


東京たりたり娘。



ごめんなさい。2度と言いません。


調子乗りました。


あー、でもさ、一つ言わせてもらっていいかな。


今の僕には君だけなんだよ、とかさ、そんな寒いセリフは言うつもりないけどね!ほんと。


あ、今の場合の「寒い」に関してはさっきと違うからね。


用法が、全然違うからセーフ。


逆にここで「冷える」を使ってしまうとおかしいわけで。



ごめんなさいごめんなさい。


主張するタイミングを間違えました。


今はそこ論点じゃないもんね。


反省モード、入らせていただきます。


僕が君のルームメイトの香織ちゃんと手を繋いで歩いてたことに関してだもんね、今は。


結論から言わせてください。



繋ぎました。


あー、石置いて。両手の、石を置いて。


公平な話なんてできないよ。だって石持ってんだもん。


随分黒いもん、君の持ってる石。


夜の闇に溶けちゃって、ほとんど見えてないもん。


え?黒曜石?


死んじゃう死んじゃう。


それ昔の人が矢じりとかに使ってたやつでしょ?


カチカチじゃん、カチカチな岩をさ、とりあえず置いてくれないと。


いやだぜ、ぼかぁ、旧石器時代の遺物で死ぬのは。


あー、ごめんなさい。


今の「僕」の言い方、古めかしくしてごめんなさい。


だって!君が!急に!旧石器の石持ってくるから!


そりゃあ古めかしい言い方してしまうよ!!


うん。お互い様ってことで、片手の石だけ、アスファルトに、置いてくれないかな??


…うん、そうそう。そーう。いい子だ。…よし。


言い訳させて。


何故、僕が、香織ちゃんと、手を繋いでいたのか。


釈明させてください。


ズバリ言います。


彼女、体調不良だったんです!!


あの日ね、たまたま帰り道で一緒になって、歩いてたのよ。


そしたらさ、彼女、すごくふらつきだしちゃって。


それで、支えるために、手を繋ぐことになったのです。


以上、私の反対弁論でした。


うん、


…なんで、石を、突きつけてくるのかな…?


いや、ほんとだって。ほんと。不可抗力。


体調が悪くて、手を繋いだ、いや、つながざるを得なかったわけで。


今の文章に一匹だけ猿が混じってたね。


言わない言わない。2度とふざけません。2度と。永劫。


だから鋭い石を喉元に押し付けるのはやめてください。


あー、血が出ちゃいますって!ほんと。僕皮膚薄いんすよぉ。旦那も知ってるでしょう、僕が皮膚薄いの。


…正直に言え?...えぇ、言いましょう。


包み隠さずね、わかりました。



助平(すけべい)を…いたしました。


私、彼女と、助平を、いたしました。


そして、不覚にも、その帰り道を目撃されてしまいました。


とんでもない、不埒(ふらち)な男でございます。


何も、他に言うことはありません。


おそらく僕の前世は猿です。


思うように自分の欲望をコントロールできないのです。


ね、猿でしょう?


そんな野蛮人はね、黒曜石で叩き殺されても何も文句は言えませんよ。


全てあなたに委ねます。


いつの間にかね、アスファルトに置いたね、岩も持ち直してますもんね。叩く気満々だ。


…最後に、一言だけ言ってもいいかな??


こんな状態で、言うのはあれなんだけど、


誕生日


おめでとう。


生まれてきてくれて、ありがとう。


来世では、君に見合うような誠実な男に生まれるy


グシャッ


ジャガイモをたたき割るような音と共に、僕はゆっくりと地面に倒れこんでいった。


薄れゆく意識の中で見えたのは地面に跳ね返る二つの石。


そっか。


優しいなぁ。


石は使わなかったんだ。


しかし、拳でこの威力はシビれますねぇ。


起きたら、うんとお礼を言わないと。


こんな馬鹿な考えをさまよいながら私は懇々と眠りに落ちていった。


夢の中でもやはり出てきたのは、二つの石。


そっか。


ずっと出てきた二つの石は


金たまのモチーフだったんだなぁ。


自分の性欲に自分自身が脅されていたんだね。


おかしな話。


あれあれ、石が向こうに転がっていく。


そっか、今この瞬間


去勢されてしまったんだなぁ。


バイバイ、ローリングストーンズ。


来世で、また会おう。



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