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ぼーっとしたい日、喫茶店で
慌ただしさから解放されたこの日、ずっと行きたいと思っていた喫茶店を訪れた。
新宿にある「名曲・珈琲新宿らんぶる」は、訪日外国人で非常に混んでいた。階下に降りる階段には長蛇の列。喫茶店に入るのにあまり並んだことがないので躊躇したが、この機会を逃したらまた来ないだろうと思った。めんどくさがりな自分の性格はよく理解している。
15分ほどで入店できた。店内は洋館のようなつくりで、大きなスピーカーからクラシック音楽が流れている。中央に大階段のようなものがあり、私はそこを降りて左の角の席に通された。
時刻は16時。席についてすぐにウインナーコーヒーを注文した。
この日、本当はもっと早くらんぶるに来る予定だった。だが店に着いた時、土日祝はフードがないと書いてあったので、お腹が空いていた私は近くの某チェーン珈琲店でピザと珈琲で腹ごしらえをしてかららんぶるに来ようと決めた。だかららんぶるでは甘いものをと思っていた。ケーキもコーヒーゼリーも完売とのことで、私としてはウインナーコーヒー一択だった。
コーヒーが来るまで店内を見渡す。大きなスピーカーは見上げた先にあって、話し声でほとんどかき消されていた音がよく聞こえる。ベロアの椅子は喫茶店の象徴だなと、妙な安心感を覚えた。喫茶店に来ると毎度、来たことないのに来たことある不思議な感覚を味わう。
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ほどなくしてウインナーコーヒーが運ばれてきた。
ウインナーコーヒーを飲むのはこれが2度目なので、ここで大した批評ができるわけではないが、クリームの甘さは控えめで飲みやすい。(私としては)非常にバランスが良いと思う。
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コーヒーを飲みながら、私はぼーっと天井を見上げたりしていた。何日か前にアーティストとしての自身のライブが終わって、活動的にも気持ち的にも一区切りついたことによって、ある種燃え尽き症候群のようになっていた。意識的にも無意識的にもぼーっとする時間を求めていた。こうして記事を書いている今もまだそんな感じがする。
ぼーっとしている間は実に色々な感情を呼び起こす。足りなくなったエネルギーを補充している充足感、ぼーっとしているだけで何も進んでないように感じる焦燥感、そこに一人でいることを客観的に見た時に感じる孤独感。
そういうものも、やがては全部曲にしてしまうんだろうなと思う、アーティストとしての性を感じ、心の中でふっと笑った。
この日は混んでいたにもかかわらず、最後まで向かいの席には誰も来なかった。運が私に特等席をくれたのかもしれない。
席を立つ。ベロアの椅子は「いつでもどうぞ」と言うようにどしっとしていた。
またここに来よう。